【粗筋】此の世の果ての殺人【感想】~最後の時まで殺し続ける~
作品情報
作者:荒木あかね
出版社:講談社文庫
雑感
テーマは非常に面白い。
ポストアポカリプスとミステリーを融合した斬新な小説でした。
ただ、肝心の事件がいまいち面白くない。調査がどうにも行き当たりばったりですし、真実の意外性もない。
また、滅びゆく運命に向き合う人々の描写に注力しているため、段々と事件がどうでもよくなっていきます。
結局は荒廃した日本の描写が中心であり、事件はそのオマケ。そんな感想になりました。
粗筋
小惑星が地球に衝突し、人類が滅亡すると確定してから数か月。
ある者は爆心予定地から逃げ出し、ある者は人生を悲観して命を絶ち、ある者は宇宙に逃げようとしていた。
そんな中、小春は人生に諦観しつつも唯一の願いを叶えるべく、イサガワ先生の自動車講習を受けていた。
このまま何事もなく最後の日を迎えるだろう。ところが、いつものように向かった自動車学校で他殺死体を発見してしまう。
すでに警察は治安機能を失っているため、事件の調査はされないまま終わってしまう。
小春は仕方ないと考えていたが、怒りに燃えたイサガワ先生は自らの手で犯人を捕まえて断罪すると言う。
確かに後数ヶ月で人類が滅亡する状況で人殺しをする理由が気にはなるし、人として許せない気持ちもある。
そして、小春も巻き込まれる形で人類最後の難事件に関わるのだった。
登場人物
地球滅亡のニュースが流れて一家離散した後も漫然と生き続ける女性。自己表現が苦手でストレスを内に溜めがちだが、世界の終わりを前に懸命に生きる人々を見て少しずつ変わろうとしている
悪人を断罪するためなら私的制裁も良しとする危険な女性。殺人事件を起こした犯人に憎悪を抱き、小春とともに調査に乗り出す。
小春は最後の最後までウジウジしており、イサガワは暴走しがち。主役の2人がどうにも受け付けられず、正直読むのはキツかったです。
彼女以外の人間も何かしら病んでおり、読後感は良くありません。そもそもデッドエンドは決まっているので明るくなりようがないんですが。
ポストアポカリプス特有の人間の怖さを見たい人には良いかもしれない。推理小説に出てくるような不器用な正義漢はほとんどいません。
事件
人間の本性が暴かれる地球最後の数か月
ポストアポカリプス作品特有の絶望がこれでもかと描かれます。
小春の自宅では自殺した父の死体が放置されていますし、山では首つり死体が所狭しと並んでいます。
無理心中で家族を失い狂った母親、心中しようと持ち掛けた両親に怯えて逃げ出した少女。
本筋の事件が霞むほどの地獄が終盤まで続くのです。そして、最後は全員死にます。あまりにも救いがない。
流石にに暗すぎるとアレだと思ったのか懸命に生きる人も多く登場します。まあ、若干ご都合主義な展開にも思えましたが。大事な場所ではしっかりと役立つ人が配置されていますし、都合よく電話が繋がりますし。
とはいえ、ポストアポカリプスの雰囲気を楽しむうえでは申し分のない内容でした。
意外性があるようでない何とも言えない事件
ポストアポカリプス×ミステリーをどう料理するのかワクワクしながら読んでいましたが、思いの外普通の結末。流石にハードルを上げ過ぎたなあと。
なんだったら普通の推理小説の動機と代わり映えがありません。こういう奴はよく見るよ。
人の死が軽い世界になっている中の殺人事件なので仕方ない面もあります。矛盾なく書くとシンプルな真実にならざるを得ない。
ポストアポカリプスに比重を掛けすぎかなとは思いました。ミステリーを期待するとガッカリすると思う。
