【粗筋】キツネ狩り【感想】~喪った右目で見えない狂気を追え~
作品情報
作者:寺嶌曜
出版社:新潮文庫
雑感
綺麗に作られとる。すっげえ映画化しやすい作品だと思う。
特殊設定「過去視」を題材としつつ事件の調査は非常に硬派。終盤まで緊張感のある物語が続きます。
クライマックスではアクションシーンが満載となり、盛り上がりは十分。
また、主要人物の悲しい過去を中だるみさせず、かつキャラクターに深みを持たせるに十分なボリュームで書いていいる点も高評価。
刑事小説のお手本のような構成で読んでいて安心感がありました。こういう作品好きだわぁ。
粗筋
バイク事故で婚約者は死亡、自身も右目を失明した尾崎。ところが、しばらくして右目に「3年前の過去」が映し出されるようになり、バイク事故が仕組まれたものだったことを知る。
本来であれば犯人以外に知りえない視覚的な情報はバイク事故に限らず、あらゆる事件に有用なのは間違いない。
彼女の能力を有効活用すべきと考えた署長の深澤は、バイク事故の解決後は未解決事件を調査する部署に異動してくれないかと打診し、尾崎もそれに同意した。
そして、2人の元上司である弓削を含めた3人で「継続捜査支援刑事部別室」を立ち上げ、前代未聞の難事件・笹塚一家四人殺人事件の調査を始めるのだった。
登場人物
バイク事故により婚約者と右目の視力を失った警察官。後遺症により失った右目に3年前の光景が映るようになり、それにより事故が仕組まれたものだと知る。以降、持ち前の正義感も合わさり、右目を活用した捜査に、邁進することになる、
尾崎の上司兼ストッパー役。数年前の事件で銃を撃てなくなったため、各部署をたらい回しにされ続けている。ぶっきらぼうな言動ではあるが、部下想いであり人望は厚い。
警察組織のルールに拘らないはぐれ者の署長。かつてチームを組んだ元上司・弓削と元同僚の尾崎を信頼しており、未解決事件を捜査するために新設した「継続捜査支援刑事部別室」への異動を命じる
あまりにもバランスの良いメンツ。お互いの足りないところを補っており、最後まで安定感がありました。
一応ははみ出し者グループですが、別に警察組織内で浮いているわけでもありません。刑事小説特有の内部抗争は一切もなし。逆に珍しい。
もう少し毒があっても良いのではとも思いましたが。仲の良い刑事小説を読みたい人にオススメです。

事件
すでに終わった場所で証拠を見つけ出す過去視が大活躍
- まさに被害者が殺されるその瞬間
- すでに取り壊されたマンションの生活
過去視があれば、誰も知りえない情報をどんどん掴めます。あまりにもずるい。
3年前という条件があったり過去視で見たモノ自体には証拠能力はなかったりといった制限はありますが、未解決事件を調査するのにこれほど素晴らしい能力もないでしょう。
ただ、過去視で犯人を見たと言うだけでは警察組織は動かせません。こじ付けでもよいので上層部に新証言を提示しなくてはいけないのです。
ある意味で証拠の捏造。特殊設定だからこその斬新な捜査過程が非常に面白く、すいすいと読み進められました。
クライマックスのアクションシーンは映画化向き!?
作者は映画化ないしドラマ化を意識してるんじゃないか。そう思わせるほどの構成。
特に終盤の真犯人との格闘はかなり燃えました。手に汗を握る展開の連続で中々にワクワクしました。
真犯人も良い感じに頭おかしかったですし、結末も悪くはない。起承転結がきれいにまとまった良作でございました。
まあ、あえて悪い点を言うならば綺麗にまとまり過ぎているかなとは思いました。なんとなく既視感があるんだよな。
踊る大捜査線、相棒などでよく見る展開な気がしないでもない。深澤はマイルドな室井さんって感じですし。
とはいえ、処女作でこの完成度は素直にすごい。推理小説好きにはもちろん、初めて読む人にもうってつけの小説です。
