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作品情報

作者:殊能将之
出版社:講談社文庫

雑感

緻密で斬新の一言。
連続殺人の犯人が模倣犯を追うってのがまず面白い。

警察はハサミ男の仕業と考えているので、下手なことをすれば関係ない殺人の責任まで押し付けられます。

そんな犯人と警察の攻防にワクワクすること請け合い。
急接近した時はついに捕まるのか!?と読む手が止まりませんでした。

1999年の作品なので、やや硬い文章となっています。
最近の小説と比べると読むのに根気がいるので注意。それに見合った感動は確かにあります。

粗筋

ハサミ男のターゲットを横取りした人間は誰だ

美少女を考察し、研ぎあげたハサミを突き刺す猟奇殺人犯のハサミ男。
彼は次のターゲットに狙いを定め、尾行を続けていた。

住んでいる場所、行動パターン、人間関係。
少女の人物像を想像することが生きがいであり、その仕上げとして殺人を行うのだ。

今回もそれで完了。そのはずだった。
ところが、少女はハサミ男の模倣犯に殺され、更にハサミ男本人が第一発見者となってしまった。

いったい誰が殺したのか。ハサミ男は調査に乗り出す。

登場人物

ハサミ男の異常さに読者の心は侵食される

  • 昼は社会人として、一般社会に溶け込む
  • 夜は殺人鬼として、ターゲットの調査や殺しを行う
  • 休日は死を求めて、自殺未遂を繰り返す

いったいどれが本当のハサミ男なのか。
本書は異常殺人鬼の内面に踏み込みます。

ただの快楽殺人鬼とは違うんですよね。ひたすらに無気力な人間。
それなのにターゲットに対する執着は病的。納得するまで徹底的に調べつくします。

「殺戮にいたる病」の犯人のように性的興奮を満たしているわけではありません。それならいっそ分かりやすかった。

ここまで犯人の描写に力を入れている作品は中々ありません。実に斬新で興味深い。

事件

ハサミ男と警察。真実に近づくのはどちらか。

前提条件や捜査能力の違うハサミ男と警察の攻防に味があります。

模倣犯の仕業と分かっているハサミ男は、被害者に恨みを持つ人物の調査から始めることができます。
ただし、一般人なので調査には限界があります。

一方で警察は人海戦術で聞き込みの速度は段違い。
しかし、ハサミ男の仕業と考えており、前提条件から間違っているのです。

警察が捜査方針の誤りに気付く前にハサミ男が真犯人を暴けるか。それこそが本書の最大の面白さです。

あまりにも丁寧なので、冗長に感じることも

序章が87ページもあり、ハサミ男の下調べパートを念入りに書いています。
ターゲットを尾行し、自分なりの少女像を描いた後に殺害する。

ハサミ男の周到さと狂気を表現しているわけですが、正直退屈でした。

1章からはしっかりと推理小説になるので、そこまで挫折せずに読み進めてください。

クライマックス

この展開は予想していなかった。

もちろんメインとなるトリックは他の推理小説でも使われています。
しかし、伏線の張り方や隠し方が鮮やかで、最後まで真実に気づくことができませんでした。

更に本作は二段構えとなっており、驚きの向こうに更なる衝撃が待っています。

まさかそうなるとはね…。
果たして最後に笑うのは誰なのか。ハサミ男か模倣犯か警察か。

読みごたえ抜群なのは僕が保証します。

まとめ

矛盾の見当たらない完成度の高い長編ミステリ。
間違いなく面白いので、タイトルに惹かれた人はぜひ読んでみてください。

若干の読みにくさはあるので、小説慣れしていない人にはオススメできません。

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