目次
作品情報
作者:我孫子武丸
出版社:講談社文庫
雑感
こりゃすごいわ。タイトルから恐ろしいですが、内容はそれを凌駕する。
よくもまあ、ここまでの作品を作り上げたものだと。作者は天才ではなかろうか。
ただ、内容があまりにも凄惨なので読む人は選びそう。登場人物と連動して吐きそうになった。
粗筋
粗筋ですが、1行で終わります。蒲生稔の連続殺人の一部始終が描かれます。
犯人は最初から分かり切っており、プロローグで稔は逮捕されていますからね。金田一少年の事件簿形式。
終わった物語を追体験する感じですかね。
ということで、ここでは粗筋ではなく、各視点の内容をざっくりと話していこうかなと思います。
3人の視点で進んでいきます。それぞれに味があり、本書を傑作たらしめた重要な要素です。
蒲生稔編
まさかの殺人者パート。
犯行の動機から犯行内容。そのすべてを克明に描きます。
その犯行内容があまりにも凄惨。不快。理解不能。
嘘偽りの無い独白ですが、脳が理解を拒む異常さです。
狂ってるよ、こいつ。
蒲生雅子編
家族が犯した罪に薄々気づいている雅子。
信じたいのに犯行を示す状況証拠がどんどん集まっていきます。
せっかくの平和な家族が壊れてしまう。守らないといけない。
直接問い詰めると疑惑を確信にかえてしまう。私にはそれができない。
では、どうすれば良いか。誰か教えてほしい。
あまりにも辛い加害者の家族パートとして重要な視点となります。心が痛い。
息子の部屋を漁って自慰行為を確認する過干渉の究極系ですが、家族を守りたい想いは本物です。
樋口編
隠居中の元警部。妻を失い生きる意味を見失っていますが、とあるきっかけで連続殺人事件を追うことになります。
正直、この物語において警察は脇役。このパートで大きく話は動きません。
いや、一般的な刑事推理小説の展開で面白いんだけどね。いかんせん蒲生稔パートが壮絶すぎてね。
ただし、犯人の深層心理を深堀する章は非常に重要。かなり深く分析をしています。
蒲生稔本人が気づけない本心。願い。衝動。それを暴いていきます。
過去の犯罪者の事例も出す本格具合。単純に知識として面白い。
トリック
絶妙に語りづらい。下手なことを言うと、それが答えになるんですよね。
なので、触りだけちょっと紹介します。
犯罪者の心理描写を克明に描いた傑作
粗筋でもお話ししたようにここまではっきりと犯人に絞った作品はそうありません。
- ターゲットをどう選び
- どう殺し
- なぜ次の犯罪を行うのか
など殺人に関わる全てがじっくりと語られます。
動機が完全に異常者のソレなので、読んでいて気持ちが悪くはなる。
全ての情報が開示されてるからこそ驚愕する
トリックはおろか犯人まで最初から分かっています。
なら他になにがあるのか。その答えは最後の数ページにあります。
殺人者視点が面白く、ガンガン読んでいたら最後の最後に頭をぶん殴られた気分になりました。
これが分かってから再度読み直してほしい。違った味があるはずです。
クライマックス
最初からクライマックス感はある。実際に逮捕されてからスタートだし。
とはいえ、やはり最後の方のワクワクは素晴らしいものがありました。
今まで別々に動いていた3人の視点が1つに収束していきます。
ラストのスピーディーな動きは感動しました。
まとめ
殺人犯視点の推理小説を読みたい人にオススメ。
事件内容は凄惨なので、グロ耐性ゼロの人は要注意。読めないことはない。