作品情報
作者:東野圭吾
出版社:講談社文庫
雑感
すべてが終わった何も起こらない推理小説
家にまつわる謎を解き明かす作品であり、物騒な事件は一切起こりません。
廃墟が舞台なので暗い雰囲気はあるもののビックリ要素は皆無。緊張感のあるクライマックスもありません。
一般的な推理小説や探偵小説を期待するとガッカリすると思います。まるで作風が違う。
一方で、じわじわと迫りくる真実への不安、不快感は不思議な中毒性があり、最後まで読む手が止まりません。先が気になって仕方ないんよな。
真相が明かされた時の衝撃も圧巻の一言。東野節全開のビターエンドが最高でした。
どう考えてもハッピーエンドになりそうにない不気味な怖さを存分に堪能してください。
粗筋
同窓会で再会した元恋人・沙也加から「白い小さな家」への同行を求められた主人公。
彼女には幼少期の記憶がなく、そこに行けば何かを取り戻せるかもしれないとのことだった。
なぜ今になって知りたいと思ったのか。なぜ主人公に頼むのか。
疑問は尽きないものの主人公は承諾し、件の家を訪ねることにした。
その家は埃被っているものの家具や道具が残っており、目立った損傷もない。
家主の衣服、編みかけのセーター、子供の日記やランドセル。
まるで家族が夜逃げでもしたかのように生活の痕跡だけが残っている白い家。
しかし、何かがおかしい。普通の人が生活をする上で決定的なモノが欠落している気がしてならないのだ。
いったいココは何なのか。住人はどこに消えたのか。沙也加との繋がりはあるのか。
白い小さな家の謎はより深まっていくのだった。
事件
家全体がトリックの舞台。そのすべてを見破れるか。
「白い小さな家」だけで進行する物語。
部屋の構造や残された物品。それら全てが推理の材料になります。
登場人物も主人公と沙也加だけ。一般的な推理小説と比べると世界観はかなり小さい。
しかし、その分、深度がすごい。徹底的に家と沙也加の掘り下げにページを割いているのです。
そして、最後に明かされた真実はキャッチコピー「伏線は螺旋となりあなたの心を虜にする」にふさわしい内容でした。
伏線の説明も丁寧にしてくれるため非常に読みやすい。読者は主人公達と同じペースで謎と証拠を共有できるので、聡い人ならば自力で真実を暴くことも可能でしょう。
「もしかして」と思って、前のページを読み直して「やっぱりね」と納得する面白さをぜひ味わってほしい。
社会問題にも切り込む意欲作
本書ではとある社会問題をテーマにしています。
再会した沙也加の暗く必死な顔。その理由は読み進めると明らかになります。
そうなった原因は過去にあるかもしれない。きっと明るい真実ではないだろう。
でも、知らずにはいられない。沙也加の悲壮な叫びが聞こえてくるようでした。
誰が悪いというか何が悪いというか。真実を知った時のやり切れない想いも本書の味の一つです。


