作品情報
作者:水生大海
出版社:光文社文庫
雑感
過去の事件に苦しみ続ける被害者をテーマにした作品。その観点で見ると完成度は間違いなく高い。
それはつまり不快感も凄いということ。イヤミスと呼ぶにふさわしく、メンタルがごりごり削られました。
特に人間模様が最悪で、明るい描写は皆無と言って良いほど。
結末もハッピーエンドとは言えず、最後までモヤモヤが消えませんでした。
それなりの覚悟を持って読んでください。
登場人物
誰にも言えない過去を持つアパレル店員。
性格も暗く、日々を苦しみながら生きている。
推理小説なので数人は嫌な人間がいるものですが、まさか全員とはね。登場人物から醸し出される生々しい不快感が本当にきつい。
- チクチクと朱莉をいびる会社のお局
- ネチネチと追及してくる刑事
- ヒステリックに喚き散らすモデル
主人公の朱莉もひたすらに暗いので、ずっとメンタルが落ち込んだ状態で読み進めることになりました。
人物描写があまりにもしっかりしているので、人によってはトラウマがフラッシュバックするレベルです。
また、登場人物がやたらと多く、関係図の把握が地味に面倒。
犯人の予想をつかせたくないんでしょうが、そのせいで1人1人の描写が薄いのがどうにも気になりました。
事件
朱莉が苦しみ続ける物語
世界のすべてが朱莉の敵となって、襲い掛かってくる物語。唯一の味方の典子もあっさり殺されるから救われない。
誰も彼もが過去に振り回されて、ついには殺人事件にまで発展します。
朱莉も朱莉で日常になじめず、孤立気味。あまりにも辛い。
あまりにもリアルな物語。事件の後遺症に悩む人の現実をこれでもかとぶつけてきます。
朱莉が何をしたって言うんだ。読者は皆そう思うに違いない。
最後には犯人が捕まり、朱莉は前向きな性格になったのでバッドエンドではありません。
しかし、事態は全く好転しておらず、これをハッピーエンドと言うのは流石に抵抗があります。
わだかまりは一切解決していませんし、状況的に全てに絶望してもおかしくないはず。
これならいっそバッドエンドでも良かったのは出ないか。そう思ってしまう結末でした。
衝撃の真相は正直肩透かし
悪い意味で予想外と言うか。いくらなんでも脈絡なさすぎな犯人でした。
確かに「衝撃のラスト」ではありますが、証拠が悉く取って付けたものなのが何だかなと。
重要参考人の登場とこれまでの展開との関係が薄く、納得しがたいものがありました。
意外性を重視過ぎて、どうでもよい人物を槍玉にあげた感じがあります。
謎が解けてすっきりした!という爽快感はありません。
朱莉の人生に重きを置いており、謎解きはそのオマケと思っておきましょう。

