作品情報
作者:藤崎翔
出版社:角川文庫
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雑感
いや~、キツイっす。
井戸端会議で故人の悪口を言い合う小説。
なんとなく想像つくしょうが、人の愚かさに満ちています。
まさか最後まで好きな登場人物が1人も現れないとは驚いた。
クライマックスも納得しがたいものがあり、ミステリーとしても微妙でした。
粗筋
坪井先生が無くなった。
神様のような人で誰もが尊敬していた恩師。
葬式場では皆が涙し、生前の思い出話に花を咲かせていた。
しかし、思い起こすと先生の周囲には不可解な点があったように思える。
彼に相談した直後に事故にあった息子。
先生との関係を断った後に深刻化したストーカー被害。
1つ1つは言いがかりに過ぎない。
でも、複数人が疑惑を口にしたら?それは真実ではないのか?
良い機会だ。みんなで考えてみよう。「本当に坪井誠造は神様なのか」を。
登場人物
一人残らず胸糞悪い。
しかも生々しい厭らしさ。昨今のSNSに感じる不快感と同系統です。
ある意味でリアルな人間模様と言えるでしょうか。
「良い人が実は犯罪者だった?」という不謹慎ネタの議論は実に楽しかったでしょうね。
本書の登場人物は反面教師として適しているかもしれません。
人の振り見て我が振り直せってやつ。
事件
各々の語りが冗長で退屈
とにかく話が進まない。
100ページまでは登場人物視点で、坪井先生との過去を振り返ります。
いかに素晴らしい先生だったかを延々と語るわけですが、まあ面白くない。
そら信者の言葉ですからね。しかも当の本人は死んでるし。関係ない僕らが読んでもそうですかとしか。
坪井先生の隠された悪意との落差を演出するためでしょうが、それにしたって長い。
しかも7人分の回想がありますからね。本格的にだるいわ。
そんなこんなで序盤の段階で何度も挫折しそうになりました。
証拠なしに罵り合う葬式出席者たち
あの坪井先生は犯罪者だったのでは。
今までの感謝も忘れ、口々に悪行の疑惑を語り合います。
そう、あくまで疑惑なんです。そら井戸端会議なんだから本格推理はできんよな。
読んでいて「なんで、コイツラこんなに自信満々なんだ」と何度も首をかしげました。
まあ、妄想って楽しいからね。辻褄はあってますし。
真実は読んでもらうとして、ここまで根拠ないとどちらにせよ悶々するでしょう。
クライマックス
いや、お前、ふざけるな。誰がこんなラストを望んだ。
今までの話はなんだったんだと。いや、関係あるにはあるんだけどさぁ。
なんだかんだで中盤までは斬新な切り口で良かったんですよね。
挫折しそうにはなりましたが、ラストが気になって読み進めました。
しかし、ラストは既視感のある展開でがっかり。
割と禁じ手なトリックと思うんよなぁ。これで良いのか坪井先生。
序盤の期待を悪い意味で裏切った展開と言えます。
まとめ
人間の醜さが詰まった小説。
ミステリーとしても納得しがたく、クライマックスは流石に読んでいてきつかったです。