目次
作品情報
作者:阿津川辰海
出版社:講談社タイガ
雑感
流石に運任せ過ぎる。
館ミステリの第3作目ですが、シリーズを追うごとに運要素が強くなっています。
火事・洪水とくれば次は地震ってのは分かりますけどね。
流石に地震とミステリーを絡めるのは無謀だったんじゃないかなぁ。
ラストも盛り上がらず、何より救いがない。過去2作に比べるとイマイチでした。
なお、これまでの主要人物が勢ぞろいするので、過去作を読破しないと話についていけません。
粗筋
黄土館に閉じ込められた助手の田所の冒険
「紅蓮館の殺人」で出会った飛鳥井からの依頼で、田所と葛城は黄土館を訪れます。
ところが、到着直後に地震が発生。葛城だけが黄土館から締め出されてしまいます。
それを知ってか知らずか発生する連続殺人事件。
余震が続き、震災と人災の両方に追い詰められる田所。
探偵の葛城不在でも事件を解決しなければならない。
こうして探偵助手である田所の挑戦が幕を開けました。
葛城は事件を未然に防げるか!?
田所と分断された葛城はいおり庵に宿泊し、黄土館への道の普及を待つことに。
そんな折、同様に宿を探していた小笠原と相部屋になります。
困ったときはお互いさまと葛城は快く小笠原を迎え入れたのです。
しかし、この小笠原は若女将の殺人を企てていた危険人物だったのです。
果たして葛城は小笠原の思惑に気づけるのか。そして、企みを防ぐことができるのか。
田所と時を同じくして、葛城の試練も始まったのです。
登場人物
なんで三谷が続投してるの?
蒼海館の殺人で初登場した田所の友人が再登板します。
葛城と田所がまたもや別行動したからでしょうが、必要性を感じない。
そして、キャラクターも受け付けない。
変に分かった気でいると言うか、やれやれ系タイプで見ていてキツイんですよね。
葛城も若干イタくなっていますが、探偵だからで納得します。主人公だし。
でも、三谷はいらないよ。田所の聞き役としてなら初登場の人物でも良かったじゃん。
事件
地震によるイレギュラーな展開が続く
本作のテーマは「偶然」です。
地震によって不可抗力の出来事が頻発し、複雑化していく事件。
果たして目の前の証拠は意図的なのか偶発的なのか。そこから推理しなくてはならないのです。
今迄の推理小説にはない画期的なシナリオなのは間違いありません。
ただ、このせいで読者が推理するのは至難になっています。言ってしまうとご都合展開なんですよね。
普通のミステリー好きは納得いかないかもしれない。
要点をまとめてくれるので、話を理解しやすい
2か所で事件が起きており、複雑化している黄土館の殺人。
読者を配慮してか田所が要点を定期的にまとめてくれます。
時系列に沿った関係者の動きを数ページにわたって書いてますからね。
このおかげで話は問題なく理解できるでしょう。
クライマックス
びっくりするぐらいすっきりしない。蒼海館の殺人のパーフェクト解決はどこにいったのか。
考えうる限り最悪の結末になってるんですよね。救いが本当にない。
やっぱねえ…動機がねえ…アレだよねえ。
とにかくやり切れないので、過去シリーズのクライマックスを期待すると痛い目に合います。
まあ、本作のテーマは「飛鳥井の復活」なので、事件そのものの後味は二の次なのかもしれません。