
作品情報
作者:長江俊和
出版社:新潮文庫
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雑感
分かるようで分からん…。
フリーライターが心中事件の真相を追うって話なんですが、それ自体は言う程ではありません。
それよりもフリーライターの行動が理解不能で、そっちの方に意識が持って行かれました。
結局、話の本筋は何だったのか。何を伝えたかったのか。
真実を自力で分かった人は誇ってよいと思います。まあ、面白いとは思う。
登場人物
冷静沈着なフリーライター。自分の状態を客観視できており、「カミュの刺客」の内容に表れている。
心中して生き残った女性。後遺症のせいか常に体調を悪そうにしており、それが不思議な魅力になって若橋を惹きつける
中盤までの若橋は優秀なフリーライターの鏡。
真実のために何度断られても取材を申し込み続ける執念、質問の内容も適格です。
ただ、途中から様子がおかしくなる。人が変わったような行動を取り始めます。
いや、これも含めて若橋なのかもしれない。心中事件より彼の方がミステリアスでした。
七緒は何とも言えません。そもそも心中偽装を疑っているせいで原稿内の七緒は怪しさ全開です。
比較的客観視できている若橋の文章とは言え、本当の彼女はどうだったのかははっきりしません。
総合すると、どっちも良く分かりません。何を考えて行動していたのか理解できない。
事件
心中事件を追うフリーライターの軌跡
作中作になっており、作者の長江俊和が未発表原稿「カミュの刺客」を世に出した体になっています。
カミュの刺客を書いたのはフリーライターの若橋呉城。心中事件の解決に並々ならぬ熱意を持っており、危険を冒してまで調査をしています。
心中で生き残った七緒を始め、亡くなった男側の関係者まで。
殺人を疑わってからは暴力団まがいの事務所まで押し掛ける等、まさに命をかけた聞き込みをしているのです。
熱のこもった本格的な取材を楽しめる。中盤までは間違いなく面白い内容でした。
真相はどこにあるのか。正しき道を模索する
過去の、しかし、関係者に深い傷を残した心中事件。
複雑な事情もあるのか関係者ははっきりと証言をしてくれません。
そのため、若橋は関係者の証言だけでなく、質問をした際の態度なども見極めようとします。
この質問をした際は怒りを露わにした、露骨に証言を拒否した。
というように裏に隠された真実を暴こうと知恵を振り絞っていました。
相手の言葉を鵜呑みにしない敏腕フリーライターの片鱗を感じられましたね。
それでもお前は何も知らないと糾弾されることになるのですが…。それだけ闇の深い事件なのかもしれません。
クライマックス
なに…この…なに。
衝撃なのは間違いない。読む手も止まらない。
ただ、理解が追い付かない。急展開の連続。どういうことやねん。
考察しがいがあるとは言えます。ノー知識で読むことを推奨。
考察サイトがいくつかあるので、読了後に読んでみましょう。
なんかかんやで一気に読みしたので引き込まれることは間違いないです。