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作品情報

作者:綾辻行人
出版社:講談社文庫

雑感

鹿谷門実が書いた「迷路館の殺人」を通して事件を追体験する作中作小説。

中盤の怒涛の勢いで行われる連続殺人は衝撃でしたが、それ以降は平凡な印象。
館シリーズではあるものの館自体に推理要素はほぼありません。厳密に言えばあるけど、認めたくない。

あくまで作中作のトリックがメインの作品と考えてください。
そう考えるとオチは非常に綺麗。色々と腑に落ちてスッキリします。

粗筋

島田に届いた小説『迷路館の殺人』

実際に起きた事件の推理小説再現。
島田は自分の良く知っている者が書いた小説に強い興味を抱く。

あとがきには死者に向けた手向けと書いている。なるほど、本書を読めば一連の事件が理解できるのだろう。

確かにあまりにも異常な事件だったため、事件の全容は人々に伝わっていない。
果たして、その事件を本書でしっかりと表現できているのか。

作者の顔を思い浮かべながら島田は1ページ目を開く。

競作の中で起こる連続見立て殺人劇

迷路館を舞台にした推理小説を書け。最も優秀な作品を書いた者に遺産の一部を相続する。

迷路館の主である大物小説家の宮垣は推理作家4人に競作の指示を出した。
審査員として編集者や評論家、推理小説マニアも呼ばれ、一同は競作に向けて活動を始める。

ところが、明くる朝になって関係者の1人が無残な姿で発見される。

よくよく調べると、どうも競作で書かれている作品の見立て殺人になっているらしい。
いったい誰が何のために。不安に戸惑う一同をあざ笑うかのごとく更なる殺人が起き…。

事件

迷路が事件にほとんど関与していない

迷路を利用した奇抜なトリックを期待しましたが、そんなでした。
少なくともトリックに迷路館である必要性を感じません。

神話に登場するミノタウロスの迷宮を再現しただけ。あくまでメインは迷路館以外にあります。

いえ、厳密に言えば迷路館のギミックが事件の真相に結び付いてはいます。

しかし、登場人物も言うように「ミステリの禁じ手」を使ったものであり、これを迷路館のトリックとは言いたくありません。読めばわかる。

作中作のギミックを見破られるか

作者は誰か?

帯の文章より

作者である鹿谷門実は「迷路館の殺人」の当事者であり、誰かは明かされません。
なぜ隠しているのか。なぜ小説と言う形で事件を公表したのか。そして、なぜ島田に謹呈本を送ったのか

その答えがラストに明らかになります。

「うわ!そういうことか!」という驚きより「はえ~うまいな~」という感心が勝ちます。
よく考えられてるんだよな。流石は綾辻先生と言ったところ。

クライマックス

迷路館の脱出…は途中経過でしかない。
真実は事件が全て片付いた後に出版された『迷路館の殺人』に残されていた。

要するに物語が予想外に動くのは事件が終わった後なので、あんまりクライマックス感がありません。
登場人物と一緒にワクワクすることができないんですよね。彼らにとっては戦後処理みたいなものです

まあ、こういうのが作中作だから仕方ないとも言える。

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