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作品情報

作者:我孫子武丸
出版社:実業之日本社文庫

粗筋

長編と歌っていますが、実際は3つの短編で構成されています。登場人物は同じで時系列もつながってます。
粗筋では1話と2話を紹介していきましょう。

監禁した美少女と謎解きをする青年

他殺死体を見つけた。
ストーキングしていた女性の下着ドロを目論んだ亮太はとんでもない事態に見舞われます。

すぐにでも通報すべきところですが、不法侵入の上に下着泥棒。
更に自宅にゴスロリの美少女アカネを監禁しており、通報しても自分が逮捕される未来しか見えません。

その少女は性的暴行を加える目的の監禁だったので、救いようがなく。
すべてが悪い方向に転がり、途方に亮太は途方にくれます。

しかし、事態は思いもよらない方向に進んでいきます。
アカネは亮太を恐れないどころか巻き込まれた事件に興味を持ち、亮太の手助けを提案します。

いったいこの女はなんなのか。
混乱するばかりの亮太でしたが、アカネの鋭い推理を聞き、次第にアカネに全幅の信頼を寄せるようになります。

入院した美少女と謎解きをする研修医

ある日、伸一が務める川越病院に一人の少女が搬送されてきました。
ひき逃げにあい、重体でしたが、なんとか一命をとりとめ入院が決まります。

少女は事故の影響か記憶が混濁しており、ハンカチの刺繍から「アカネ」という名前だけ判明しました。

このまま何ごともなければ、退院するだけの病院になるだけだろう。
しかし、事態はそうはなりません。事件が自然とアカネに引き寄せられているかのようでした。

看護師の飛び降り自殺。誰もが事故を考えましたが、アカネだけは懐疑的でした。何か見落としていることがないか。

アカネ本人は重体で動けないので、伸一に協力を求め、事件の真相究明に乗り出すことになったのです。

トリック

動かない探偵の推理劇

現場に行かずに推理を行う「安楽椅子探偵」をテーマにした作品。

また、タイトル通りに主人公のアカネは常に何かしらの監禁状況にあり、それがまた安楽椅子探偵のテーマ性を大きくしているように感じました。

彼は警察に通報できない。アカネと名乗る少女を自室に監禁しているからだ

粗筋より抜粋

この粗筋のインパクトはかなりのものがありました。つい手に取っちゃうよね。

こういうテーマが好きな人は良いかもしれない。漫画家や映画化もされてますからね。

状況証拠ばかりで安楽椅子探偵としての納得感はイマイチ

肝心の推理ですが、個人的にはイマイチ。どれもこれも結果論というか納得感がないんですよね。
数々の証拠で断定しているのではなく、不可能なケースを除外した消去法で犯人を特定しています。

犯人も恐ろしいぐらいに自供が早く、探偵と犯人の攻防が見たい人にはとことん向いていない。

ただ、犯人の動機は中々に興味深い。そんな理由で犯罪したのかよと。
この辺は作者の殺戮にいたる病もそうでしたね。

https://kamo-life.com/saturiku

トリック云々より犯人の動機を考えながら読むとより楽しめるかもしれません。

アカネがいないほうが探偵小説っぽい

1話と2話でアカネに協力していた男性2人が探偵役を引き継ぎ、アカネの正体を暴きます。
その過程で過去の凄惨な事件が判明するという流れで、推理小説としてポピュラーな展開と言えるでしょう。

地道な調査、警察との情報交換、重要人物との会合。
ぶっちゃけ「安楽椅子探偵」というテーマを度外視した3話が一番面白かったです。

そのかわり「安楽椅子探偵」としては失格。本書のテーマから逸脱しています。
1冊で様々なミステリを楽しめると思えば悪くないのかもしれません。

性描写が多いのが気になるか

直接的ではありませんが、全話に通じて性犯罪に関わる描写があります。
そういうのが苦手な人はちょっと注意かな。

しかも事件にいまいち関係がありませんからね。亮太の監禁の件もある意味で舞台装置を整えるだけの準備ですし。

クライマックス

ついに明かされるアカネの正体と目的。
1話と2話が結びつき、1つの結末になるのは中々に面白かった。

惜しむらくは爽快感がないことか。
あくまで主役がアカネだからでしょうか。2人の男性の調査では真実がぼかされたままでした。

いろいろな憶測はあれど、結局アカネの真意を推し量ることはできなかったのです。
最後の最後までアカネはミステリアスな存在だった。敢えてはっきりさせないことで魅力を増しているとも言えます。まあ、でもすっきりしたかったよね。

まとめ

粗筋のインパクトに内容が負けた感。
悪くはないのですが、淡々と読み進むだけで驚きは特になかったかな。

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