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作品情報

作者:伊岡瞬
出版社:文春文庫

雑感

がっつり楽しめる刑事小説。
ただし、殺人事件は起こらないため推理小説好きには向きません。

王道でありながら王道とズレた刑事小説と言えるでしょう。

また、ラストは人によっては後味を悪く感じることも。少なくともハッピーエンドとは程遠いです。

粗筋

連続して自殺をする人々

高田馬場駅に飛び降り自殺が発生。
更に自殺者の処理に当たった駅員や鑑識係まで次々と不可解な自殺を遂げます。

鑑識係の友人の永瀬は自殺を信じられず、原因を突き止めようとします。
ところが、上層部は本件を深く調べずに早々に打ち切ります。

警察の、それも拳銃自殺をなぜ深く調べないのか。
不可解に思いながらも永瀬は事件を忘れるしかありませんでした。

3年の時を経て語られる赤い砂の真実

事件の記憶を忘れ始めていたころ、またしても原因不明の自殺が発生します。
無言で暴れまわった後の飛び降り自殺。どう見ても普通ではない。

依然として上層部は一連の事件を事故として処理をしたまま。
それを調べようとする永瀬に圧力をかける始末です。

この事件は俺のものだ。刑事人生を失う危険を顧みず彼は事件にまつわる「赤い砂」の正体に迫るのでした。

トリック・推理

被害者の全てが自殺

自殺には外的要因があったので、ある意味で連続殺人と言えるかもしれません。
しかし、一般的な殺人事件とは一味も二味も違います。

動機もなければ犯人もいない。トリックもない。ないない尽くしの事件と言うわけです。

黒幕の思想もそんななので、「推理」を期待して買う作品ではありません。

はみ出し刑事の実直な捜査に好感触

足を基本とした地道な聞き込み調査が続く王道刑事小説。
ただし、上層部の隠ぺいにより永瀬は何度も捜査を妨害されます。

何度も恩師に引き留められ、上司には謹慎処分を言い渡され、それでも永瀬は事件に向かって突き進みます。

永瀬ならきっと事件を解決してくれる。愚直な彼の良さに読者は感化されることでしょう。

創作物の警察はなんでこうも隠蔽したがるのか。実に興味深い。

クライマックス

刑事小説らしい実にビターなエンド。
永瀬は報われたのか。それは本人しか分かりません。

確かに事件は解決するんですけどね。ハッピーエンドを見たい読者はモヤモヤします。
まあ、刑事小説ですっきり終わる方が珍しいけどね。特にはみだし刑事が主人公だと。

まとめ

赤い砂に関わる人間たちの自殺。
寡黙で情熱にあふれた永瀬に好感を持ち、どんどん読み進められました。

ラストは辛いものがありますが、きっとなんとかなるでしょう。多分ね。

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