作品情報
作者:斜線堂有紀
出版社:ハヤカワ文庫JA
雑感
2人以上を殺すと地獄行きという制限を加えた本格ミステリ。
あり得ない連続殺人事件の真相究明をテーマとしており、今までにない作品として読みごたえがありました。
設定も明確に定められており、特殊設定ミステリの入門書にオススメ。
ただ、犯人捜しはやや性急すぎて、答えありきで書いている感じはありました。
粗筋
突如として世界中に降臨した天使は人類がルールを順守しているかを監視し、違反者には業火で燃やしながら地中に引きずり込む天罰を与え始める。
天使より与えられたルールは1つ。2人以上を殺害しないこと。
これにより一時は殺人事件が激減した。しかし、人の悪意はそんなルールすらあっさりと超越するのだ。
ある者は考えた。2人以上なら何人殺しても同じではないか。
これにより自暴自棄な人間による大量殺人が多発するようになった。
別のある者は考えた。1人までなら殺しても問題ないのでは。
ある種の免罪符を得た人々は罪の意識を抱えることなく、選んだ1人を喜々として殺害するようになった。
そして、今、それらのどれにも該当しないあり得ない事件が起きていた。
連続殺人事件が発生しておきながら、天使に罰せられる人間が一向に現れないのだ。
いったいなぜ天使は犯人を許しているのか。何らかのトリックがあるのか。
天使を憎悪する探偵の青岸は天使の生態を調べ、事件の解決に動き始めた。
事件
人々の生き方にも影響を与える天使
ルール自体は単純な「1人1殺」。殺しの条件も明確に決められており、例外はほとんど発生しません。
- 2人以上殺した者は天使によって地獄に引きずり込まれる
- 殺意は関係ない。事故であってもカウントされる
- 医療行為によるやむを得ない死は免除される
それなのに作中では連続殺人事件が発生しておきながら天罰は起こっていません。
普通に考えれば別々の事件が同時に起こっていると思う所ですが、それにしたって犠牲者が多すぎます。何らかのトリックで連続殺人を完遂した人間がいるはずなのです。
特殊設定ならではの奇想天外な事件。どんどん物語に引き込まれること請け合いです。
また、天使は事件以外でも物語に大きく影響を与えます。
なんたって天使ですからね。崇拝対象です。しかし、一方で人々を容赦なく殺す殺戮者でもあるわけで。
- 天国の存在を証明する証として、天使を崇拝する
- 地上を地獄に変えた天使を憎悪する
- 異形の化け物にただただ恐怖する
十人十色の反応が面白い。天使に対する人々の感情を理解することで事件の真相に辿り着けるようになっています。
状況証拠だけで推理が完結してしまう
物的証拠が極めて少なく、あってもトリックを確定せるだけで犯人に結び付きません。状況証拠で断定するしかないのです。
トリック自体は面白いものの犯人の追い詰め方はモヤモヤが残りました。
幸いに黒幕があっさり自供したので良いですが、ごねたら捕まえられなかったんじゃないかな。
あくまでトリックに重きを置いた作品であり、それ以外はオマケ程度に思っておきましょう。
そんなわけでクライマックスも特に盛り上がりません。しんみりと終わります。
死亡者数はありえないぐらい多いんですけどね。色々と規格外な物語なのは間違いありません。




