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作品情報

作者:恩田陸
出版社:角川文庫

雑感

とにかく読む手が止まる。僕は1週間の間にゆっくりと消化した。
キャラクターは正直没個性。あまり印象に残らない。僕には合わなかった。

粗筋

徹頭徹尾わけがわからない。僕はいったい何を読んでいたんだ。

良くも悪くも新鮮。軽いノリで読む小説ではない。色々と重いよ。

大量毒殺事件が人々の心に落とす影

かつて名家で起こった毒殺事件。
死亡者10人を超えた事件は被害者が医療界の大御所だったこともあり、大々的に報道されました。

一家は善人であり恨みを買うような人間ではない。
数少ない生き残りも家族を殺すことのメリットよりデメリットの方がはるかに大きい。

暗礁に乗り上げた事件でしたが、やがて自殺した青年が遺書に自供文を残していたことが判明。
事件は表向きは解決しました。

しかし、その青年にも動機が見えない。それどころか名家との繋がりも分からない。

そんな動機無き大量殺人事件が関係者の心を永遠に蝕んでいるのです。

忘れられた祝祭が語る事件の裏の顔とは

そんな事件を小説にした女性がいました。
雑賀満喜子。幼少期に名家と関りがあり、大学生時に事件の振り返りとして執筆しました。

それを読んだ人の後押しで出版されたのが「忘れられた祝祭」。
賛否両論でありながらも大ヒットし、事件は多くの人の関心を集めたのです。

しかし、事件の結末は作品では分かりません。
そもそもなぜ雑賀がそれを書こうと思ったのかもわからない。これもまた謎に包まれたものだったのです。

トリック・捜査内容

本作を複雑にしているのが文章の構成です。
章ごとに視点が切り替わるのが本当にややこしい。

難解すぎる視点の切り替えで読むのに苦労する

本書のメインがインタビュー形式の章。
何者かが雑賀に倣っているのでしょう。地の分は全てがインタビューを受けている人物の言葉となります。

インタビューを受ける人物
  • 「忘れられた祝祭」を書いた雑賀
  • 名家の生き残りの令嬢
  • 雑賀の兄弟
  • 雑賀に協力した青年
  • 事件の生き残りの主婦
  • 刑事
  • 事件と全く関係ない店主

事件も風化しているので、口を閉ざす人はいません。
当時は語られなかった真実が語られたのでしょう。

また、これとは別に登場人物の一人称視点も作中に登場します。

一人称視点の人物
  • 「忘れられた祝祭」を書いた雑賀の幼少期
  • 刑事
  • 雑賀に倣ってインタビューを行った人物

それ以外に手紙形式の章もあり、地の分のスタイルがどんどん変わります。

これが本当に読みにくい。
最初こそ珍しかったんですが、中盤から読み進めるのに苦労しました。

一歩進んで二歩下がる不気味な内容

起承転結の「承」が無限に続く感じ。
進展があったように見えて、実際は何も進んでいない不気味な構成となっています。

小説の裏粗筋で「真実を語っているのか?」みたいな意味深な文章があり、嘘つきを見つければ良いと思っていました。でも、そんな単純な話じゃない。

読後の「なんじゃこりゃ」感が強い。そして、おそらく作者はそれを意図的に演出している。

作中に登場する小説「忘れられた祝祭」がまさにそんな感じですからね。
本書はそれに続く続編と位置付けると良いのかもしれない。

推理小説として読むべきではない

フーダニットもなければホワイダニットも微妙。ハウダニットは言うまでもなく。
正直これをミステリー小説と言うのには抵抗がある。ドキュメンタリー小説に近い。

そう考えると人の複雑さが克明に描かれていて、恩田節が効いているとは思います。

クライマックス

クライマックスらしいクライマックスはありません。なんか気づいたら終わってる。
いや、重要なウソは確かにあるんですよ。あるんだけど、いまいち爽快感はない。あ、そう…って感じ。

そもそも作中で分かりやすい人間が刑事ぐらいしかいないのがね。
どいつこいつも腹に一物を抱えていて癖が強い。素直に読めない。

帯の「すべてを、疑え」にふさわしい気はしますけどね。

まとめ

推理小説好きはあまりの異質さに挫折する。
恩田先生が好きな人は読む価値があるかもしれない。少なくとも今までにない小説なのは間違いありません。

他の人の考察は読まない方が良いかもしれない。自分の結論が正解だと思います。

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