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作品情報

作者:今村昌弘
出版社:創元推理文庫

粗筋

ミステリ愛好家の葉村と明智は「1年前に何かが起きた映研夏合宿」に参加するため、同じ大学の探偵少女である剣崎とペンションを訪れます。

そのペンションは映研OBの七宮の親の所有物であり、なんと無料で宿泊ができるとのこと。
もちろん慈善事業ではありません。七宮は典型的なクズで合宿に参加した女性を口説く魂胆があったのです。

タダより怖いものはない。1年前の合宿で何が起きたか何となく想像できた葉村は暗澹たる思いに駆られます。

ところが、事態は予想と全く異なる展開に。

想像だにしない事件。とてもではないが外には出られない状況で一同は籠城を余儀なくされました。

なんとか救助が来るまで我慢しよう。それだけで十分だ。
とはならないのが、ミステリ小説と言ったところでしょうか。

籠城した部員が何者かに次々と惨殺され、事態はより混迷を極めるのです。

いったい何が起きているのか。無事に葉村たちは脱出できるのか。
こうして絶体絶命の籠城戦が始まったのでした。

事件・推理

良い意味で予想通りの展開で推理のしがいがありました。

昨今の推理小説でありがちなどんでん返し。本書はそれのアンチテーゼとなっています。
なんでもかんでも想定外ってことはないんですよね。

「ありえない事態」を除けば、おおよそ予想は可能。
言葉はアレですが、とんでも展開ばかりの作品と比べると推理しやすいんですよね。

真実が語られる前に証拠は揃っており、自分で謎が解き明かす感動を味わえます。

頭の固い僕でも謎の1つは解けたので、慣れた人だと全て看破できるのではと。
まあ、逆に言えば推理マニアには肩透かしかもしれません。

独自性の評価

いわゆる特殊設定ミステリで、「現実ではありえない要素」を1つ追加しています。
言ってしまうと籠城することになった原因がそれなのですが、純粋な推理小説を期待する人は面喰らうでしょうね。

ただし、特殊設定は1つだけ。それ以外は現実に即しています。
そうでないと推理もなにもありませんからね。全て後付けで片付いてしまう。

もっともそれさえ受け入れられるならトリックは納得できるものばかり。普通にミステリとして楽しいです。

クライマックス

謎解きまでは緊張感がありますが、いざ解けるとあっさり結末を迎えます。
籠城も解決しますし、犯人もそんな嫌らしくありません。

じゃあ、ハッピーエンドかと言われると…んーって感じ。

クライマックからの締めがいまいち締まらないなというのが正直な感想です。

まとめ

特殊設定に抵抗が無ければオススメしたい良書。
読みやすく読者自身で推理できる点もグッド。

エピローグはちょっと締まらない感はありますが、別に作品の評価を著しく落とすほどでもありません。

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