作品情報
作者:鳴神響一
出版社:角川文庫
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雑感
どうにも消化不良感が強い。
シリーズ作品の1巻目だからしょうがないのでしょうが、クライマックスも何とも締まりがない。
登場人物にも魅力をあまり感じない。新鮮さがありません。
脳科学の用語が頻出するので、勉強としてはありとは思います。
いずれにせよ一般的な刑事小説を期待して読む作品ではないです。
登場人物
どうにもテンプレ的な人間ばかりで魅力を感じない。
- 正義感に燃えて警察上司にも物おじしない女性捜査官
- 初対面は嫌味な男だが、段々と良さが分かる相棒
- 常に主人公を見下し、頻繁に怒りを表す上司
- 組織を守ることを重視する官僚
- ぶっきらぼうだけど、主人公の手助けをする中年刑事
1人1人は別に良いんですが、こうも揃うと既視感が凄い。
言ってしまうと、「踊る大捜査線 レインボーブリッジを封鎖せよ」に酷似しているんですよね。
嫌味な警察の人間達は最後まで登場するので、それもちょっとなあと。流石にうっとおしい。
人間的な魅力を求める人に本書は合いません。良いなって人が誰もいない。
事件
犯人と対話するネゴシエーション小説としてはグッド
知能犯ですので、爆発物の残骸から犯人に迫る証拠はありません。
というか、常に爆弾の隠し場所を探すことになっており、それどころではない。
結果、内容の大部分は犯人との対話による情報の引き出しになります。
メールではありますが、ここまで顔の見えない犯人とやり取りする作品は珍しい。
脳科学の知識を活かして、犯人の素顔を読み解こうとする流れは中々に新鮮でした。
心理学・脳科学用語を雑に詰め込み過ぎか
脳科学捜査官ということで、用語解説にかなりのページを割いています。
が、それが割と雑に詰め込まれている印象。ここでそんなに説明する?みたいな。
しかも、かみ砕かずに用語を羅列するので、読むのが割と面倒でした。
仕方ないのかもしれませんが、分かりやすい例えもありません。
ていうか、夏希本人が知識をひけらかす人間を嫌いと言っておきながら理解不足の人間を正そうとする展開が多くてなんだかなと。
真面目と言えばそうなんですが、ある程度は軽く流せよと言いたい。
クライマックス
いかにも「To be continued」って感じの結末。
明らかに続編を意識した終わりでした。犯人とのやり取りが雑に消化されてんだよなぁ。
結局、犯人の動機がわかんないですからね。いや、リアルと言えばリアルなんでしょうが。
謎に恋愛要素の伏線も残してますし、刑事小説としては何とも言えない。
まとめ
シリーズ作品の1話なので、主人公の導入と思えば悪くはない。
が、本書だけを見ると消化不良が強く、主人公の自分勝手さが目立つ。
登場人物の魅力もなく、評価はしにくいか。2巻以降から変わるかもしれませんが…。