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作品情報

作者:西澤保彦
出版社:コスミック文庫

粗筋

とんでもない作品やわ…。
色々と奇想天外で理解が追い付かない。主人公でさえ混乱してるから読者は当然よ。

「学校」で行われる不可思議な生活

マモルが生活する全寮制の学校。
6人の生徒と3人の大人たちが過ごす場所で、日々推理ゲームが行われていました。

その内容は非常に曖昧。登場人物と事件の概要だけで、真相を暴く証拠の提示はありません。
あくまで生徒の発想力を測るもの。明確な答えはないのです。

日々与えられる事件、それ以外は普通に生活ができる日常。
飯はまずいですが、生徒同士の関係は良好で順調な日々を過ごしていたのです。

生徒の追加で崩壊する学校の日常

7人目の生徒ルゥ。彼の登場で学園の崩壊が始まります。

ある者は目に見えて怯え、ある者は冷静を装う。
マモル以外の5人の変化はあまりにも異常でした。

それに呼応するかのように起こる連続殺人事件。
怒涛の勢いで殺人が発生していきます。もはや平穏な日常は戻りません。

いったい誰が殺したのか。今までの推理ゲームの本番とでも言うのか。
マモルの動揺をよそに事件は混迷を極めていきます。

空想と妄想の行きつく先

事件以外でも「生徒たちの妄想」がマモルの心をかき乱します。

  • この世界は虚構である
  • 我々は名探偵の卵である
  • 別人格の記憶を有している

あまりにも突拍子のない妄想。
しかも本人たちはそれを妄信している。

マモルは混乱します。まあ、マモル自身も妄想をしているので生徒全員なのかもしれませんが。

「学校」とは何なのか。その正体の判明が事件の解決にもつながるのです。

トリック

本格推理好きにはオススメできない

殺人事件らしいトリックは一切ありません。「推理ゲーム」という課題をあざ笑うかのような陳腐な事件です。
ていうか、事件自体が終盤に発生しますからね。そらそうなるよと。

もちろんそれは本書を否定するものではありません。
一連の陳腐な事件の数々が本書の大きな謎を解決するきっかけになります。

とはいえ、トリック好きは到底納得できないでしょう。
なので、推理を求めている人にはオススメしません。なんなら推理小説かどうかも若干の疑問が残ります。

文章全てが謎を解き明かすカギ

一方で学校の謎に焦点を当ててみると、これほど丁寧な作品もありません。
何気ない一文も伏線となっており、ラストに納得を持たせるものとなっています。

マモル一人称視点で進みますが、それがある種の叙述トリックになっています。
材料は揃っているので、ぜひ自分で推理をしてみてほしい。

クライマックス

とんても展開に驚愕せよ

殺人事件はあくまで前菜。学園の秘密こそが本筋でした。

事件と違って証拠の提示は十分すぎるほどありましたからね。真実を知った後に読み返すと違った味を楽しめることでしょう。

生徒たちの妄想にも意味があったのだから凄い。ただのページ稼ぎではありません。
この学校、いやこの世界の正体とは。ファンタジーなのかリアルなのか。そのすべてが最後に明かされます。

結末はほぼバッドエンド

びっくりするほど後味が悪い。救いなんて何もない。
殺人事件が起こるんだから多少が暗くなるのは致し方ないのですが、そんなのが陳腐に見える展開がマモルに襲い掛かります。

すべてを理解したマモルがそれを受け止めるのが非常に辛い。
今後の彼の境遇を思うと何とも言えない気持ちになります。

まとめ

読むべき価値のある名著。事件そのものより学校の謎が全てです。

最後までトンデモ展開が続きますが、読み終わってみると全てが綺麗につながっていました。

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