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作品情報

作者:東野圭吾
出版社:講談社文庫

雑感

かなり綺麗に作られており、読む手が止まることはない。半日で読了。
最後に何とも言えない気持ちになるのは東野作品あるある。確かに予想外の結末ではあった。

粗筋

胸糞わりぃ…ただただ胸糞わりぃ…。そんな小説。

山荘に訪れた住人を巻き込む立てこもり事件

樫間貴之は婚約していた朋美を失い、失意の中にいました。
そんな彼を朋美の父の森崎信彦が別荘に招待します。

娘を失った今だからこそしたい。そんな彼の意を汲み、貴之は快諾することに。
そして、訪れた山荘生活の初日。

なんと逃亡中の銀行強盗が押し入り、貴之を含めた7人の男女を人質に立てこもりを始めたのです。

いったいどうしてこんなことに。困惑した一同は山荘で絶望の一日を過ごすことになります。

そして、殺人事件が起こる。

最初こそ銀行強盗の押し入れでパニックになった面々ですが、それを上回る事件が勃発します。
住人の殺人事件。明らかに銀行強盗に犯行は不可能な状況に一同の緊張が高まります。

いったい誰がどうしてこんなときに事件を起こしたのか。

そんなとき、親友の阿川桂子がとんでもないことを言い出します。

もしかしたら朋美の事故が何か関係しているのでは。

彼女は朋美の事故を誰かの陰謀と疑っており、今回の殺人事件はそれが関係していると考えていました。
おかしなことに銀行強盗もその事故に興味を持ちます。おそらく暇つぶしなのでしょうが。

そして、銀行強盗の後押しで皆は殺人事件と事故の2つの事件を追うことになったのです。

トリック・推理

3つの事件が複雑に絡み合う

本書をややこしくさせているのが事件の多さでしょう。

  • 樫間朋美の事故死
  • 銀行強盗の立てこもり
  • 山荘内の殺人事件

銀行強盗の混乱に乗じた殺人事件が特に厄介で、なぜこのタイミングで行ったのかが全く分かりません。

粗筋で言ったように動機は朋美の事故死。少なくとも桂子はそう考えています。
ということで、事故死の検討も行っていくと。

一見関係のなさそうな3つの事件がどうつながっているのか。
極限状態の推理合戦が中々に面白い。かなり異色な推理小説だとは思います。

読者に違和感を少しずつ植え付けていく構成

結末を予想するのこそ難しいですが、違和感は確実に感じます。
とにかく誘拐犯の行動が意味不明なんですよね。こいつら何がしたいんだと訝しむことは間違いないでしょう。

とっとと出ていけばよいのに他人の事件に首を突っ込みますからね。暇人では説明がつかない。
その状況に住人も慣れていくのがまた違和感。ある種の運命共同体になってすらいます。

いったい事件の着地点は何なのか。3つの事件以外に隠された何かがあるのでは。作家から読者への挑戦状と考えて良いでしょう。

真相がわかってから読み終えると納得の行動が多いです。

クライマックス

吐きそう。マジで心にくる。

この作品は驚きの心に一粒の切なさを与えてくれる

作品紹介

とありましたが、一粒どころじゃない。しばらくは落ち込むレベルできつい。

なんというか「ゴミみたいな悪意」と「一途で報われない愛」がないまぜになって読者の心にぶち込んでくる感じ。

一応は犯人も分かり、事件は解決しますけどね。なんか誰も得してねえなと。
真実と引き換えに全てを失った感じ。いや、最初から失ってたのか。

何度も言うようにとにかく救いがないので、すっきりとした本を読みたい人は避けた方が良い。僕も少し後悔してる。

まとめ

構成は非常に面白い。作画は東野圭吾先生と言えます。
が、オチはあまりにも辛い。吐きそう。そんな感想。

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