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作品情報

作者:西村京太郎
出版社:講談社文庫

雑感

すごいな、この展開は本当に想像できなかった。

タイトルや表紙から「電車の時刻」に絞った事件だと思ったんですよ。
でも、電車はあくまできっかけであり、ここからまさかの展開に繋がっていきます。

予想外の結末はよく見ますが、予想すらできない事件というのは本書ならではでしょう。

唐突に後ろから殴られたような衝撃でした。なんでそうなったんだ。
十津川シリーズの中では異色な作品と言えます。まじで電車関係ない。

なお、古い作品のためか句点がやたらと多いのが少し気になりました。

粗筋

朝刊で某中年の孤独死の記事が目に入る。
一見すると警察と無縁の内容に見えたが、十津川はどうにも気になってしまった。

というのも、死んだ人物は殺人事件の裁判で被告人に不利な証言をしていたからだ。
果たしてこれは事件なのか。それとも偶然なのか。

十津川の不安は的中し、他の証人も次々と不可解な失踪をする。
この不吉な状況を目のあたりにし、十津川は容疑者の最後の言葉を思い出していた。

「証人全員を殺してやる」

登場人物

良くも悪くも特徴のない実直な刑事が主人公。

周囲との軋轢はありませんし、部下からの信頼も厚いです。
ただ、あくまで事件がメインのため、人間関係を深堀することはありません。

まあ、シリーズ作品ですからね。全部読めば、色々と分かってくるのでしょう。

登場人物の描写より事件そのものを楽しみたい人にオススメの作品でした。

事件

あまりにもトリッキーな展開で面喰う

なんでこんなことになんの?ってぐらい事件の全容がすんごい。

なにより十津川がそれを看破したのが怖い。なんでわかんねん。
幸いにも読者が思うであろう疑問を他刑事が質問してくれるので、なんやかんやで納得できますけどね。

若干の結論ありきな展開がいくつかありましたが、それが気にならないレベルで面白いです。

警察内で徹底的に討論する異色な刑事小説

警察小説と言えば足で事件を追うのが定番ですが、本書は違いました。

十津川が事件の様相を検討し、形を作ります。
そして、出した結論を捜査会議にぶつけてブラッシュアップさせていくのです。

その後はそれを固める証拠を部下に命じて探す、と言う流れ。

議論こそが本書の肝。いわば、口を使って事件を追う作品と言えるでしょう。

事件は会議室で起きていると言わんばかりの展開が続きます。
十津川が会議室でいると安心感すごいんだろうな。

動機は考えるな

ホワイダニット好きにはオススメできません。
発端の殺人事件がほとんど深堀されませんし、真犯人の自供もないまま終わります。

とはいえ、動機から犯人を絞るのは不可能に近い事件なので、僕はそこまで気になりませんでした。

クライマックス

しっかり事件を解決して、めでたしめでたしとなっています。
しかし、どうしてもモヤモヤは残りました。

警察の対応が後手に回って、最後の最後まで犯人の掌の上にいた感が強い。
終わりよければ全てよしかもしれませんが、途中経過が割と悲惨ではある。

まあ、ゴールはあくまで犯人逮捕だからね。そういう意味ではハッピーエンドだよ。

まとめ

警察同士のディベートが面白い傑作。
事件があまりにも奇想天外なので、人によっては面喰うかもしれない。

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