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作品情報

作者:東川篤哉
出版社:光文社文庫

雑感

烏賊川市シリーズの第1作であり、東川先生のデビュー作。

ユーモア満載な内容であるものの事件自体は凄惨。
真犯人が微妙なのは気になりますが、推理小説としても読みごたえありました。

なお、推理してからの証拠探しなので、読者が解くのは不可能でしょう。

粗筋

戸村流平、事件現場から逃走す

貧乏学生の戸村は今日も今日とて大学OBの先輩宅で映画を観ていた。
酒に映画にお風呂と先輩宅で自由に過ごしていた戸村だったが、唐突に試練が訪れる。

なんと戸村が部屋でのんびりしている間に先輩が殺害されていたのだ。

現場を見た戸村は卒倒し、半日近く死体と同衾してしまった。
やっと目が覚めた彼は友人に電話し、心を落ち着けようとする。

しかし、友人から戸村の元カノが前日に殺害された情報を知り、余計に混乱する事態に。

状況的に自分が犯人にされてしまう。
恐れた戸村は先輩の亡骸を置いて逃げ出したのだった。

最終兵器、探偵のお義兄さん

一縷の望みをかけ、鵜飼探偵に連絡をした戸村。
探偵は快く戸村をかくまい、一緒に事件の捜査を行うことになった。

しかし、猶予はない。
元カノの重要参考人として戸村は警察に追われる身である。
更に先輩の死体まで見つかれば、逃げることは困難を極めるだろう。

捕まるまでに事件を解かなくてはならない。戸村の人生を懸けた大捜査が始まる。

登場人物

登場人物全員がギャグ要員でぶったまげた。

どこか抜けてるけど、捜査はしっかりとする粋な奴ら。
不快なキャラは一切いません。推理小説でそれはどうなんだと思わないでもないですが、

戸村をこっぴどく振った元カノでさえ笑えるので、後味の悪い作品が苦手な人にうってつけの小説です。

事件

ハリソン・フォードの逃亡者をマイルドに

逃亡者風のコメディ推理小説。
ほとんど戸村の自業自得なんですが、結果的に警察に追われる羽目になります。

逃亡先を転々として真犯人を探そうとするのは洋画を見ているかのようでした。

まあ、あまりにもおっちょこちょいなので人によってはヤキモキするかもしれない。

ハウダニット小説として面白い

密室殺人+主人公が被害者と一緒の部屋というハウダニット好きにはたまらない内容。
探偵も密室の謎を解こうとするので、おのずと殺害手段が重視されます。

また、トリックも斬新で非常に味がありました。

ただし、証拠が後出しな上、刑事が前提知識を持っていないと推理しようがなく、若干のご都合主義を感じました。

なんで刑事がそんなマニアックな知識を持っているんだよと。
どの推理小説でも言えることではありますが、せめて専門知識のある戸村が気づけばな。

クライマックス

あー、そうなるのかあ。
正直、飛躍し過ぎな感はありますが、伏線はしっかりと残されていました。

フーダニット好きにはオススメできませんが、そういうのに拘りが無ければ間違いなく面白い。

動機もしっかりと分かるので、モヤモヤは一切残りません。
300ページ程度なのに綺麗にまとめたなぁ。

まとめ

デビュー作とは思えない良書。
コメディ+逃亡+推理と色々な味があります。

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