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作品情報

作者:望月諒子
出版社:新潮文庫

雑感

本格推理小説であり、緻密なプロットは素晴らしいの一言。

その分、ページ数は膨大。まとまった時間で読んでも3日は見た方が良いでしょう。
捜査が一歩進んで二歩下がるの連続で辛抱強く読む必要があります。

結末は賛否両論。個人的には安易な着地をしなくて好感を持ちました。

粗筋

吉沢末男という男

吉沢末男という青年がいました。
父親はおらず母親は売春で日銭を稼ぐ。母は金遣いも荒く、度々男を家に連れ込むような女でした。

そんな状態でありながら末男は必死に家を守っていたのです。
せめて妹だけは真っ当に生きてほしい。そのために汚いこともしました。妹にかかる火の粉を払ってきました。

そんな少年期から十数年が経ち、彼は世間を震撼させる大事件の容疑者として関わることになります。

企業恐喝事件と連続殺人事件の関りとは

木部美智子は企業恐喝事件を追っていました。
と言っても大した事件ではありません。あまりにも幼稚な恐喝に対して、簡単に屈する工場長。
彼女が関わる雑誌のちょっとした穴埋め記事としてストックする予定でした。

ところが、その事件と連続殺人事件に繋がりがあることが分かったのです。

売春する女性が立て続けに銃殺される事件。それに関して、犯人と思わしきものが工場長に対して脅迫状を送り付けます。

お前のところのパートの娘を誘拐した。二百万円を用意しろ

本文より抜粋

かぜ親ではなく会社を脅迫するのか。そもそも脅迫事件と連続殺人事件の容疑者は同じなのか。

こうして複雑怪奇な事件が幕を開け、その中で社会の暗部を垣間見ることになるのです。

トリック・推理

家庭崩壊した子供の末路を描く

売春に身を落とした女性が子を産み、その子が再び売春婦となる連鎖を書いた作品。
まあ、ノワール小説としては割とポピュラーなテーマだと思います。

木部美智子シリーズの1つであり、主人公は変わりません。
その代わりサブ主人公として吉沢末男が登場します。

その吉沢を軸に現代社会の闇を描き、その行く末を見守るのが本書。
メディアを巻き込み国民全員にこの世の闇を訴えかけます。

刑事・同業・関係者に話を聞き、真実を暴く

主人公は敏腕のフリー女性記者。
刑事には警戒する人も木部には心を許し、多くの情報を提供してくれます。

もちろん刑事ではないので、権限の必要な調査はできません。
そのため、刑事の秋月に情報を渡し、見返りとして警察が掴んだ情報をもらいます。

刑事小説とは一風変わった事件へのアプローチが面白いと感じました。

ただ、大枠は刑事小説とは変わらず、読むのは相応に苦労します。少なくとも一気読みはできない。
刑事小説が好きな人にはあり。そうでない人は苦労するかな。

クライマックス

フーダニットに終始しており、決着はそんなに以外でもありませんでした。

ミステリー市場に燦然と輝くラストの大どんでん返し!

帯の紹介文

誇張しすぎかなぁと。正直これ以外の真実は予想できない。
落としどころが以外と言えばそう。でも、主人公は刑事じゃないからな。

まとめ

メディアが主人公の推理小説として完成度が高い。
内容は濃いので、本格刑事小説が好きな人向け。

特に最後に大どんでん返しはありません。でも、望んだ結末を見れると思うよ。

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