作品情報
作者:望月諒子
出版社:新潮文庫
雑感
売春婦が子を産み、その子が再び売春婦になる連鎖を書いた作品
ノワール小説としてはポピュラーなテーマではあります。
本格推理小説でもあり、マスコミが主人公の作品として完成度が高い。
その分、ページ数は膨大。まとまった時間で読んでも3日は見た方が良いでしょう。
捜査が一歩進んで二歩下がるの連続で辛抱強く読む必要があります。
結末は賛否両論。個人的には安易な着地をしなくて好感を持ちました。
粗筋
とある企業恐喝事件を追っていた木部美智子。
取るに足らない事件のはずだったが、調べる中で連続殺人事件に繋がりがあることが分かってくる。
売春婦が立て続けに銃殺される事件。それに関して、犯人と思わしき者が工場長に脅迫状を送り付けていたのだ。
お前のところのパートの娘を誘拐した。二百万円を用意しろ
なぜ親ではなく会社を脅迫するのか。そもそも脅迫事件と連続殺人事件の容疑者は同じなのか。
こうして複雑怪奇な事件が幕を開け、その中で木部は社会の暗部を垣間見ることになる。
登場人物
敏腕フリー女性記者。人脈が広く、独自の情報網で真実を明らかにする
家庭崩壊している中で妹を守るため必死に生き続ける青年。
後に世間を震撼させた大事件の容疑者として扱われることとなる。
木部美智子シリーズの1つであり、彼女自身はあくまで探偵としての役割しかありません。
その代わり吉沢末男が本書の重いテーマの中心人物として、ひたすらに苦しみ続けるのです。
父親はおらず、売春婦の母親は金にも男にもだらしないろくでなし。
そんな地獄のような環境で、それでも妹のため犯罪行為もいとわず、汚れていく兄。
末男の行く末を見守る過程で現代社会の闇を暴く。それが本書のテーマです。
事件
マスコミならではの手法で情報を集めていく木部。
込み入った調査はできませんが、刑事の秋月と接触し、情報交換することで真実に近づいていきます。
刑事小説とは一風変わった事件へのアプローチが面白いと感じました。
ただ、大枠は刑事小説とは変わらず、読むのは相応に苦労します。少なくとも一気読みはできない。
刑事小説が好きな人にはあり。そうでない人は苦労するかな。
内容としてはフーダニットに重きを置いています。
なお、帯の紹介文にあるような「驚きの大どんでん返し」は言うほどありませんでした。
落としどころに意外性はありましたけど、読み進めて行くとそれ以外の結末は逆にあり得ないよなと。

