作品情報
作者:岡嶋二人
出版:講談社
雑感
全体的に読みやすく、するっと頭に入る。3時間程度で読了可能。
シェルターに閉じ込められた4人が三カ月前に起きた事故の真相を暴くお話。
それは事故だったのか殺人だったのか。まあ、こういう流れになる時点で殺人確定ではある。
閉じ込められているため現場の調査はできません。
彼らを閉じ込めた被害者の母親が残した証拠から推理をしていくのです。
- 現場の調査はせず、推理だけで真実にたどり着くのが好き
- 閉じ込められた登場人物の極限状態を見たい
な人にオススメ。
トリック・推理
主人公と読者が同じペースで真実に近づく
本格推理と銘打っている通りに登場人物の思考を丁寧に描いていて面白い。
探偵役が真実を知っているくせに思わせぶりな態度を取るイライラはありません。
少しずつ出されるヒントをもとに雄一が読者と同じペースで真実に到達します。
流れもムリがなく、ここまで情報が出ていれば確かにそういう結論になるなと。
雄一の冴えが良すぎる気もしますが、そこは小説だからね。さもありなん。
雄一以外の登場人物の役割も明確で、
- 積極的に真実を暴こうとする千鶴
- 真実の究明に消極的な鮎美
- 自分と鮎美に矛先が向いた時だけ攻撃的になる正志
と行動が一貫していてブレません。結局こいつの役割なんやったねんが無いのは良いね。
脱出ゲームとしても読み応えあり
閉じ込められたシェルターからの脱出。
事件の真相と同じぐらい本書で力を入れている部分です。
極限状態からの脱出自体は珍しくありません。ていうか、定番だったりする。
じゃあ、本書は何が独自かと言うと、「段階的に進める場所が増えるRPG要素?」があります。
彼らをシェルターに閉じ込めた三田雅代の障害を1つずつ取り除いていくのです。
最初は1つの部屋しかありませんが、少しずつ行動範囲が拡張され、事件の証拠も合わせて増えていくのは面白いなと。
だいたいの小説はだんだんと行動範囲が狭まっていきますからね。その逆は新鮮さがあった。
クライマックス
正直ご都合過ぎる内容だとは思った。そんなのアリ?みたいな。
珍しくはないんですけどね。こういう展開。でも、本格推理でこれかあというガッカリ感はあった。
推理小説をそれなりに読んでる人には想定できる内容です。
真相が真相だから仕方ないですが、すっきりしません。
その後どうなったか何も分からないですからね。
真実が分かった時点で推理小説としては終わりだから仕方ない面はある。
まとめ
ムリの無い推理で思わせぶりな態度を取る人間がいない良い意味で正直な推理小説。
結末はちょっとアレなのが残念か。