作品情報
作者:月原渉
出版社:新潮文庫nex
雑感
- 連続殺人で追い詰められる緊張感を味わいたい
- 「トリック」より「動機」の究明を重視する
- 記憶を失った女性と我々読者がともに真実に近づく共感
- 人間模様に興味はない
切り口が面白い推理小説。ただ、本格ミステリーかどうかは疑問が残る。
最初から全てを知っている探偵役の静が周囲を振り回しているだけに見えるんですよね。
地道な捜査は一切なく、意味深な静にヤキモキすることになります。
彼女なりの理由があるんでしょうが、シリーズ作品のため本書だけでは静の真意はわかりません。
前作を読めば分かるのかな。謎です。
事件
犯人を捜す作品ではない
宇江神家で起こる奇怪な連続殺人の物語。
死体はむごたらしく首が切断されており、更にその首が中庭で浮遊していたとの目撃談があります。
事件のカギを握るのは記憶喪失の少女。実にワクワクします。
ただし、フーダニット目的では楽しめません。
連続殺人でありならがそもそもの容疑者になりうる人物は7人しかおらず、すごい勢いで死んでいくので推理せずとも犯人が分かってしまいます。
謎自体は極上なのでトリックを楽しみながら読んでいきましょう。
探偵役の静の言葉を解読する物語
とにかく静の意味深すぎて言動が分かりにくい。
- わたくしはそのような役割なのです
- 他の誰かではないとしたら?
など曖昧なセリフで周囲を動揺させます。
展開的にどうあがいても犯人でないのが余計にややこしい。
他の登場人物も意味深なセリフを吐きますが、読み終えると意味は理解できます。
このメイドだけはまじでややこしい。まあ、それが本書の魅力と言えるかもしれません。
入れ替わり殺人なのかどうなのか
本書で動機やトリックの議論はほとんどされます。
ただ、「入れ替わり」という点については徹底的に調べていきます。
首無しだからこその静の推理なのでしょうが、とにかくしつこいぐらいに調べる。
なぜここまで執拗に追及するのか。それを推理するのは我々読者なのでしょう。
さっきも言ったように探偵役の静の思考を推理する。本書はそんな作品です。
調査とは言ってますが、すべてを承知している節がありますからね。ミステリアスなメイドだぜ。
クライマックスの勢いがすさまじい
そもそもの殺人ペースが速かったこともあり、ラストの勢いは特にすさまじい。
RTAの如く人が死んでいきます。犯人やりたい放題過ぎるだろ。
真相の発覚は中々に衝撃。推理小説の大前提を破った意欲作だと思いました。
だからこそ人によっては拒否反応を示すかもしれません。
読み返せば推理できそうではありますが、大前提を破る発想にまずならない気はする。




