【粗筋】占星術殺人事件【レビュー】~6つの死体から作られた完全体の行方~

作品情報
作者:島田荘司
出版社:講談社文庫
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雑感
大量殺人・未解決・浮世離れした探偵。
探偵小説とはかくあるべきという内容でした。間違いなく面白い。
読者に解かせるために証拠や証言を鹿k理と書いており、ミステリー好きにオススメの内容でした。
なお、殺された画家の手記「AZOTH」は読み飛ばしてかまいません。(序盤の46ページ)
御手洗探偵が言うように電話帳を読んでいる気分になります。僕はこれが原因でしばらく積んでいました。
もちろん事件には関係ありますが、概要は登場人物が説明してくれます。気になったら読み直しましょう。
粗筋
殺された画家・梅沢平吉は謎の手記「AZOTH」を残した。
内容は6人の娘から切り取った身体の一部を組み合わせ、完璧な美しさを有する女性を作るというもの。
その後、実際に娘たちは殺害され、身体の一部を切り取られた遺体が各地で発見された。
AZOTH作成を企てた平吉はすでに殺されている。しかし、彼以外に奇天烈で残忍な殺人事件を超す人物はいない。
平吉は生きていたのか?それとも彼の意思を引き継いだ人間がいたのか。
警察は賢明な捜査をしたが、犯人はもちろんAZOTHも見つからず時効を迎えた。
そして、40数年後の現在。今では多くのミステリーファンを虜にする未解決事件として広く知れ渡っている。
登場人物
躁鬱が激しく自分勝手な貧乏探偵。しかし、頭脳は確か。今回、未解決事件の調査を依頼される。
御手洗の助手であり、良き相棒。自身も生粋のミステリーマニア。発想や行動力には目を見張るものがあるが、思考が固まりやすい。
すでに過去の事件と言うことで事件関係者はほとんど登場しません。
石岡が調べた内容を御手洗に話す形で物語は進行します。後半は各地で聞き込みをしますが、あまり印象に残りません。
そのため、この2人が気に入るかどうかが全てです。まあ、典型的な探偵と助手タイプなので気にならないでしょう。
事件
ミステリーファンを虜にする大量殺人事件
6人の女性が殺され、各々が足や頭部などが切断されている。しかも東は秋田、西は兵庫まであちこちに死体が埋められていたと。
更に動機を持つ平吉は何者かに既に殺されていた。世間に注目されるのも無理はありません。
未解決事件や見立て殺人などワクワクするテーマを扱っており、ミステリーファンには垂涎ものの内容です。
なお、これは作中でも言われていますが、今の警察機関なら事件を解決していたと思います。証拠はかなり残っていますからね。
そのため、ご都合主義じゃないかと思うかもしれません。その辺りだけはご注意を。
とはいえ、だからこそ我々読者の力で解決できる事件になっているとも言えますね。ぜひ自力で真実を見つけてください。
資料を通して探偵と助手で議論を交わす
すでに無数の素人探偵が議論しつくした事件。
予習もかねてどのような推理がされたか石岡が分かりやすく伝えてくれます。
あらゆる可能性が示されるので、当時、どれほど注目されたか分かります。
しかし、それでも誰も事件を解決できなかった。結局、結末は未解決事件なのですから。
ああでもないこうでもない。御手洗たちは過去の探偵たちとディシュカッションをしていく。1つの事件を実に丁寧に扱っており、読む手が止まりませんでした。
ほぼ安楽椅子探偵ですね。石岡が動き回っていますが、御手洗は思考を働かせ続けていました。
クライマックス
なるほどあ。情報が多ければ良いというわけではない。僕は石岡と同様に占星術殺人事件の罠にかかっていたようです。
実際の事件は非常にシンプルなものだった。御手洗はそう告げます。しかし、事件は今日まで誰も解決できなかったのです。
なぜ御手洗は解決できたのか。犯人は誰なのか。そもそも生きているのか。動機はあったのか。
そして、AZOTHはどこに安置されているのか。その答えが矛盾なくしっかりと回答されます。
壮大な風呂敷をきれいに畳んだまさにミステリーファン必読の一冊でした。
古い作品と言うこともあり若干の読みにくさはありますが、それでも2,3日で一気読みできる内容でした。それぐらい読む手が止まらないんだ。