作品情報
作者:宮部みゆき
出版社:集英社文庫
雑感
人間の心理描写にかけて、宮部みゆきの右に出る者はいますまい。
インターネットで作られた「疑似家族」という何とも言えない不快感は読んでみないと分からない。
各々が救いを求めた結果、生まれたもの。確かに彼らには救いなのでしょう。
しかし、本当の家族はどんな気持ちになるのか。疑似家族は何も考えていません。
どこまでも孤独で自分勝手な人間たち。でも、誰もが一度は憧れる感情かもしれない。
その感情を解き明かすことで、事件の真相が見えてきます。
そんなこんなで「動機」に重きを置いた小説です。トリックも何もありません。そもそも取り調べだけで話は終わりますからね。
一般的な推理小説を期待して読む作品ではないかな。まあ、でも、面白いよ。先が想像できなさすぎる。
登場人物
被害者であり、疑似家族の父親をしていた所田良介の実の娘。他の疑似家族に憎悪を抱いている。
主人公は警察なんですが、正直あまり印象に残りません。やはりメインは一美でしょう。
年頃の娘が知った父親の裏切り。しかも疑似家族の娘は自分と同じ名前「カズミ」だと知ります。
いったいそれを知った彼女の想いはいかほどのものか。
物語中ずっと苛立っており、父親以外の疑似家族を突き止めようと躍起な模様。
彼女は救われるのか。それとも不幸なままなのか。それが物語の肝になります。
事件
2人の刺殺体。現場の遺留物から連続殺人事件と断定されます。
ただ、意外と単純明快で、トリックも何もありません。物的証拠さえ見つかれば逮捕のシンプルな事件でした。
警察は容疑者である疑似家族3人を集め、取り調べを始めます。
父親と知らない人が一緒にいるのを見たと話す一美も別室で協力者として待機しています。
会話を通して疑似家族の内容を解き明かしていきます。取り調べで事件の話なんかほとんどしません。
人間のどうしようもない感情「孤独」をテーマとしており、ある種のヒューマンドラマと言えるかもしれない。
クライマックス
こんな真相があって良いのかよ!色々と辛いよ、僕は。
警察が特に苦しそうでしたね。単純な事件の方が気は楽だったんだろうな。
事件の真相に気づいてからはどう決着をつけるか考え続けています。
下手をすると、みんなが不幸になる。そならないための手順は何か。
もはやメンタルケアに近い。警察って大変なんだなあ。
後味は良くありません。気をつけてください。
ネタバレ感想
警察全体が疑似家族の模倣をして、一美を騙す壮大な仕込み。
疑似家族と警察の芝居、タイトル「RPG」はこの2つのダブルミーニングになっていました。
父親がとにかく気持ち悪いよなぁ。
不倫中の女に嘲笑れる実の娘ってなんやねんと。どんなに良い子でもメンタルぶち壊れるわ。
まあ、なんだかんだで父親に似ているので、彼女の将来は不安しかありませんが…。
かといって従順な母親に似ても幸せになる未来は見えないので、産まれたときから詰んでる感はありますね。
孤独と自己愛がドロドロに入り混じった昼ドラみたいな感じでしたね。人間不信になる内容です。