作品情報
作者:殊能将之
出版社:講談社文庫
雑感
緻密で斬新の一言。
殺人鬼を主人公にしておきながら作中で起きた事件の犯人は模倣犯ってのが面白い。
警察はハサミ男の仕業と考えているので、このままでは無関係な殺人事件の責任まで押し付けられます。
そうならないために犯人を探し出すハサミ男と警察の攻防にワクワクすること間違いなし。
古い作品が故に文体は硬く、最近の小説と比べると読むのに根気がいるのだけは注意。
しかし、それに見合う感動は間違いなくあります。
粗筋
美少女を観察し、研ぎあげたハサミで突き刺す猟奇殺人犯のハサミ男。
彼は次のターゲットに狙いを定め、尾行を続けていた。
住んでいる場所、行動パターン、人間関係。
少女の人物像を想像することが生きがいであり、その仕上げとして殺人を行うのだ。今回も何事もなく完了するはずだった。
ところが、少女はハサミ男の模倣犯に殺され、その死体をハサミ男本人が最初に見つけてしまう。
いったい誰が獲物を奪ったのか。こうしてハサミ男は同じ猟奇殺人鬼の調査に乗り出すのだった。
登場人物
- 昼は社会人として、一般社会に溶け込む
- 夜は殺人鬼として、ターゲットの調査や殺しを行う
- 休日は死を求めて、自殺未遂を繰り返す
いったいどれが本当のハサミ男なのでしょうか。
普段は無気力な一般人に過ぎません。
それなのにターゲットに対する執着だけは病的。納得するまで徹底的に調べ尽くすのです。
本書ではそんな異常殺人鬼の内面に踏み込んだ意欲作となっていました。
ここまで犯人の描写に力を入れている作品は中々ありません。実に斬新で面白い。
事件
ハサミ男と警察。真実に近づくのはどちらか。
前提条件や捜査能力の違うハサミ男と警察の攻防が見所の作品。
模倣犯の仕業と分かっているハサミ男は怨恨の線から調査ができますが、一般人なので捜査には限界があります。
一方で警察は人海戦術で聞き込みの速度は段違い。しかし、ハサミ男の仕業と考えており、やはり捜査は思った以上に進展しません。
警察が捜査方針の誤りに気付く前にハサミ男が真犯人を暴けるか。それこそが本書の最大の面白さです。
なお、模倣犯の事件発生前に「ハサミ男による殺人対象の下調べパート」があるのですが、そこだけで87ページも割かれています。
ターゲットを尾行し、自分なりの少女像を描いた後に殺害する。
ハサミ男の周到さと狂気を表現した大事なパートですが、平坦な内容で読むのに苦労します。
そこを乗り越えれば一気に面白くなるので、何とか挫折せずに読み進めてください。
衝撃の結末に興奮が止まらない
この展開は予想していなかった。
メインとなるトリックは他の推理小説でも使われており、本書の専売特許ではありません。
しかし、伏線の張り方が鮮やかで、最後まで真実に気づけませんでした。
更に本作は二段構えとなっており、驚きの向こうに更なる衝撃が待っています。
果たして最後に笑うのは誰なのか。ハサミ男か模倣犯か警察か。衝撃の結末をお楽しみ下さい。


