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作品情報

作者:町田とし子
巻数:3巻(完結)

粗筋

よく出来てる。最後の最後まで結末が予測できない。

自分を突き飛ばした幼馴染の目的は何なのか

なんで俺を殺した?

1話より

トラックに惹かれた佐原。
成仏することなく魂となって街に居続けることになりました。

親友の宅、死んだときに一番泣いてくれた蓮乗。
別れとお礼の言葉を送り、その場を去ります。

彼が最後に憑いたのは幼馴染の千秋。彼の死の直前まで一緒にいたのです。
佐原だけは知っていました。俺は千秋に突き飛ばされて死んだと。

お前のしたことを許さない。どうにかして全部をみんなに伝える。
こうして佐原の戦いが始まるのでした。

メイ視点で語られる佐原の別の顔

本作のもう一人の主人公であるメイ。
父親が霊媒師を生業としており、メイもその力を継いでいました。

彼女の能力に気づいた佐原は「自分が殺されたこと」をメイに伝えます。
これを聞いたメイは真実の究明に乗り出します。

とはいえ、そもそも佐原のことは何も知りません。動機が何にしろまずは佐原を調査しないといけない。
宅や蓮乗、サッカー部員の謙汰に近づき、話を聞きだしていきます。

その中で変容する佐原の人物像。善人と思っていた彼の歪な過去が語られます。

彼はいったい何者なのか。なぜ殺されたのか。
結末の読めぬまま物語はクライマックスを迎えるのでした。

トリック

建前と本音が入り混じるコミュニケーションの闇

本作の肝は「会話」です。
メイが佐原の交友関係を別の人間の視点で聞き直すことで、物語が全く別のものになっていきます。

佐原視点で観れば、宅は漫画が得意な面白い奴です。
一方、蓮乗視点では佐原が宅を虐めているように映っていました。

認識の違い。これは現代でも社会問題として取り上げられていますね。
これ以外も各々の人物の視点で佐原の人物像が形作られていきます。

メインキャラ以外も言葉に重みがあり、読破後に読み直すと登場人物の違った姿が明らかになります。
ある意味で人間の怖さと優しさを表現した作品と言えるかもしれません。

ジョハリの窓をテーマにした意欲作

つまるところ、本書は「ジョハリの窓」を扱った作品と言えます。

自分の知らなかった他人の評価。最初は「解放の窓」だけで語っていた。
佐原は物語を通じて「盲点の窓」と「未知の窓」を開ける旅をすることになったのです。

その過程で佐原を殺した犯人を突き止め、過去の闇も暴くことになります。
言葉のトリックとして非常に面白い作品。何が真実か自分の目で確かめてほしい。

クライマックス

何も言うわけにはいかない。それだけ予想のつかない展開なのだから。

ギリギリのことを言うと、とんでもない鬱エンドにはなりません。2巻がピークで後は落ち着きます。
中盤までの鬱展開がえぐいからね。流石にそれほどひどくはならないよ。

まとめ

全3巻ながら非常によくまとまった作品。
どう決着するかが最後まで読めない隠れた名作でした。まあ、あとがきを見るに作者も最後まで結末に悩んでたっぽいからね。

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