作品情報
作者:深町秋生
出版社:双葉文庫
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雑感
言ってしまうと壮大な親子喧嘩。しかも生死をかけるレベル。
父親が想像を絶するクズなので、作中で一番悪なのではと疑ってしまいます。
言葉だけ見れば、親子で未解決事件を解決する美しき親子愛なんですけどね…。
とにかくアクションが激しいので、そういうのが好きな人にオススメ。
事件としても複雑で読みごたえがありました。
なお、恐らく実際に起きた未解決事件「八王子スーパー強盗殺人事件」を題材にしています。
粗筋
22年前に起きた未解決事件「スーパーいちまつ強盗殺人事件」。
その事件にのめりこんだ日向直幸の父はストレスを家族にぶつけていました。
折檻と呼ぶには生ぬるい拷問。その果てに母は早くに亡くなっています。
そして、時は現代。奇しくも父と同じく警察となった直之の近くで発布事件が発生しました。
それに使われた拳銃の線条痕が未解決事件に使われたものと酷似しており、直之は未解決事件の捜査に関わることになったのです。
更にその事件に刑事を引退した父が関係していることが判明。事件を通して父との因縁に終止符を打つ決意を固めました。
決して相いれない親子が追う未解決事件の真実とは?今、全ての謎が明かされます。
登場人物
まさか徹頭徹尾クズな父親だとは思わなかった。
推理小説において、父親と子供の確執は珍しくありません。
間違いなく父親に問題はあるのですが、情状酌量の余地も多少はあります。
しかし、本作は違います。父親として以前に人間として破たんしている。
妻や息子をストレスの捌け口として徹底的にいたぶり、事件を解くために人の心を平気でもてあそびます。
あまりにも描写が生々しく、事件よりコイツを罰してくれと思ってしまうぐらいにはひどい。
しかも「警察」としては優秀であり、だれにもたどり着けなかった真実に近づくのだから質が悪い。
結果として父親のおかげで本書は面白くなったと言えます。唯一無二の優秀な刑事だよ、ちくしょう。
事件
徹底的な暴力の嵐
父親はもちろん主人公の戦闘能力は高く、さらに容赦のない暴漢も出現します。
未解決事件を探る中で三つ巴の様相を呈し、三陣営が血みどろの争いを繰り広げるのです。
親子とあっても例外ではありません。事件を解決するより自分の命を失いかねません。
かなりアクションに力を入れており、一般的な刑事小説とは毛色が異なりました。
父親の先に事件解決の糸口あり
本作の特徴的な点がもう1つ。
それは未解決事件へのアプローチです。
主人公は事件そのものの調査はそこまでできません。
すでに調べつくしており、新たな証人も口を閉ざすからです。
その代わり父親がいたるところで事件を起こしており、痕跡を多く残していました。
しかも明らかに未解決事件と関係性があります。警察としては捜査しないわけにはいきません。
そうなると息子の日向に役割ができるのは必然。もっとも父親に迫れる存在です。
日向は父親の思考を読み取り、だれよりも早くコンタクトを試みます。
一方、父親は息子を排撃するか利用するか思考するのです。
もちろんそこに愛情などありません。敵の敵は味方程度の関係性です。
もはや事件そっちのけの父親VS息子の構図と言ってもおかしくないでしょう。妻まで巻き込みますからね。
クライマックス
ど派手。
本当に日本かというぐらいのドンパチが待っています。
真相を隠そうとする輩との決死の戦い。親子はそこで初めて共闘します。
なぜそこまで真実を隠ぺいするのか。そこに潜んだ闇とは。
22年前になぜ店員が3人も殺されたのか。恐ろしい真実も明らかになります。
激しいクライマックスをご堪能ください。
まとめ
休む暇もない激しい攻防に読む手が止まらない。
父親の癖が半端ないので、彼をどう思うかで本書との相性が決まる。