作品情報
作者:吉川英梨
出版社:光文社文庫
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雑感
まあまあスタンダート。
焦点の当たらなかった被害者の遺族がメインとなっており、前作を補完する内容です。
その分、インパクトは弱い。鬼気迫る展開もラスト以外ありません。
ゾンビを人間と見るか否かをより深く考えた内容として面白くはありました。
なお、事件性はありません。もう終わってるからね。
登場人物
確執のあった父親との再会、そして、和解。
前作みたいに由羽の強烈な拒絶反応があるかとヤキモキしていましたが、意外とあっさり解決します。
不快感のないオッサンで救いのない感染捜査のムードメーカーになってくれました。
ただ、インパクトは弱かったか。人となりは分かりましたが、どうにも登場した意味がはっきりせず。
両親不仲の理由もモヤモヤしたままなので、家族要素を入れる必要があったのか疑問ではあります。
まあ、エピローグを見るあたり由羽以外にゾンビと関わる親族が欲しかったということでしょう。
弟の謙介でも良かったと思いますけどね。前作同様に空気気味なのは残念。
事件
前作からの壮大なエピローグ
すでに起こってしまったクイーン・マム号(QM号)の悲劇を振り返る物語。
事件もなにもありません。巻き込まれた人間たちの後日談と言ったところでしょうか。
父親を失い家庭崩壊した一家。仲間を撃ち殺して夜も眠れなくなった関係者。
相変わらずゾンビの研究をしたがる諸外国。
淀んでいた時間をある一報がぶち壊します。大破したQM号内にゾンビが生存中だというのです。
ゾンビとはなんだったのか。家族は向き合えるのか。
そんな振り返りをする内容です。前作が好きだったなら読む価値あり。
ヒューマンエラーの連続でモヤモヤするか
いえね、実によく書けているんですよ。そらそういう行動をするよなと。
ただ、神視点で読む僕としてはどうにもイライラしました。
例によってヘイトは主人公の由羽に集まります。お前がしっかりしとけば被害は最小限になったんやねえかと。
共感はする。でも、納得はできない。そんな些細な、しかし、致命的な判断ミスを連発します。
良くも悪くも感受性豊かな人間ですからね。こんな地獄のような世界でなければ優秀な刑事として昇進していったんでしょう。
色々と不憫ではある。でも、イライラもする。そんな感想。
相棒の来栖が頼りがいありすぎるのもね。比較しちゃうよ。
物語が動き出すまでが遅い
クライマックスまで黄血島の生活やQM号引き上げの段取りが延々と続きます。
つまらないとまでは言いませんが、一向に物語が動き出さず悶々としました。
前作の振り返りもあったので致し方ないか。遺族との関わりにページを割いています。
それにしたってサブタイトル「黄血島決戦」になるのが後半なのは流石になあと。そこをもっとも見たかったのにね。
クライマックス
流石に前作は超えられなかったか。
射殺許可は降りているので、普通に善戦しています。理不尽な敗北はあまりない。
場所も良かった。逃げ場のない船とは状況が何もかも違います。
それでも途中から縛りプレイを政府から強要され、何度も窮地に立たされます。
本当の敵は人間だった。ゾンビ映画にありがちな展開になります。でも、個人的には面白かったよ。
考察
舞台となった黄血島の元ネタは硫黄島。
米軍との決戦の地と言ってますし、ほぼ間違いないでしょう。
ここを舞台にするとなると出てくるのが国際問題。
今回の作戦にあたり、米国や中国、ロシアまでもが話に絡んできます。
前作は「ゾンビを人と扱うか」がテーマでしたが、今回は「外人ゾンビをどう扱うか」がテーマです。
ゾンビと言えど、殺害すれば国際問題になりかねません。中々に考えさせられる内容でした。
もちろんゾンビを殺すしかないことはどの国も分かっているでしょう。
しかし、これほど政治利用しやすい案件もありません。ゾンビであっても自国民。仮に射殺すれば報復は必至というわけです。
この問題はゾンビに限った話ではありません。日本人と外国人で対応を変えざるを得ない話はままあります。
その中でどんな決断を下すか。政治問題をゾンビに絡めた意欲作なのは前作同様ですね。