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作品情報

作者:月村了衛
出版社:徳間文庫

雑感

作者の言う通り、ブラックジャックの法律家版。
ヤクザ相手に法外な値段で依頼を引き受け、弱者は格安で助けます。

今回の事件はそんな彼にふさわしい凄惨な事件。
アウトロー界隈だけでなくマスコミや警察も利用し、事件はやがて日本全体を揺るがすほどになります。

総力戦という感じで見ていて本当に楽しい。
マスコミは推理小説で悪になりがちですが、本作では心強い味方となっているのも良いね。

粗筋

法曹界を追われた男が戦慄の犯罪に挑む

検察の裏切りにより無実の罪で捕まった宗光。
服役中に母を亡くし、法曹界に憎悪を持つようになりました。

しかし、根っからのお人好しでもあるのでしょう。
ひょんなことからパキスタン人少年の依頼を格安で引き受けることになります。

調査内容は行方不明になった旧友の捜索。
どこにでもある夜逃げの1つと考えていた宗光ですが、やがて想像だにしない闇に触れることになります。

表と裏で犯人を追い詰めろ

ヤクザでさえ閉口する凄惨な事件。

その犯人に気づいた宗光は法の裁きを受けさせようと決意します。
しかし、弁護士資格のない彼にできることはありません。

そこでかつて親友だった弁護士の篠田の協力を仰ぐことになります。

裁判に必要な証拠は俺が集めてやる。
ヤクザたちの協力も取り付け、宗光は黒幕に挑むことになるのでした。

登場人物

ヤクザを守るダークヒーローの非弁護人宗光

ヤクザの資産管理や裁判の手助けをするアウトローな法律家。
しかし、心の内では正義の心がくすぶっている男。それが宗光です。

非情に見える彼ですが、助けを求める声はどんなに小さくても見捨てられません。

融通の利かない一匹狼というわけでもなく、目的のために様々な手段で協力を取り付けます。
事件解決のために何度も危ない橋を渡り続ける様はまさにダークヒーローと言えるでしょう。

親友から仇敵になった弁護士の篠田

宗光と並々ならぬ関係の篠田。彼もまた魅力的なキャラクターを秘めています。
宗光を剛とするなら篠田は柔でしょう。親友時代は暴走する宗光のストッパー役となっていました。

堅実な彼は弁護士として大成し、宗光の依頼を引き受けることになるのですが…。

敵対しながらも阿吽の呼吸で事件に挑む宗光&篠田の連携が非常に気持ち良い。

事件

ヤクザや闇ブローカーを活用したアウトロー調査

宗光にまともな捜査はできません。
しかし、間違いなく法律家として秀でているため、ヤクザ幹部のコネを獲得しています。

もちろんリスクは計り知れませんが、宗光は事件解決のためヤクザの手を何度も借りることになるのです。

なんなら警察よりヤクザの方が早く確実な調査をしてくれます。手段が豪快で見ていて楽しいんだよなぁ。

利害が一致しているので、宗光の指示は条件付きで確実に聞いてくれますからね。
あまりにも巨大な悪に対抗するにはこれ以上ない味方でした。

ゴールに辿り着くために全ての組織を利用しろ

犯人も動機も早い段階で分かります。
しかし、あまりにも犯人が狡猾なため、ヤクザの力だけでは物的証拠を見つけられません。

そのため、宗光は黒幕の陰謀で捕まった依頼人を弁護し、マスコミに事件を拡散させようとします。

そうすることで警察は調査に動かざるを得なくなり、黒幕の犯罪を暴くルートが出来上がります。
もちろん道程はかなり苦しい。何度も挫折しそうになりながら宗光は細い糸を手繰り寄せるのです。

要するに本作は守りの小説と言えるでしょう。黒幕の猛攻を防ぎ、反撃のチャンスを探るのです。

社会からはみ出た人たちの現実

ヤクザ崩れや外国人在住者の苦悩も題材にした社会小説の一面も持っています。
宗光自身もはじき出された人間ですからね。社会に対する怒りは並大抵のものではありません。

事件のきっかけも救いようのないこの現実にありました。
社会問題を考えるきっかけにもなるでしょうね。

クライマックス

宗光、よくがんばった!

もうね、報われたんだなって。僕は感動したね、お前じゃなきゃ無理だったよ。
自分の出来ることは全部出し切り、そうしてやっと掴めた真実。

読後の満足感が半端ありませんでした。これは色々な人にオススメしたいな。

まとめ

マスコミ・警察・ヤクザのすべてを巻き込んだ壮大なリーガルミステリー。
これを1人の男が計画したんだから凄いわ。

ブラックジャック好きは特にはまると思う。本当にオススメです。

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