スポンサーリンク

作品情報

作者:有栖川有栖
出版社:創元推理文庫

雑感

フーダニットの決定版。
登場人物が多く、過去回想もほとんどないため裏の顔が分かりません。

ヤマ勘やメタ推理や不可能なので、証拠や証言から推理するしかないのです。

更にクローズドサークルにもなっており、疑心暗鬼の中、それでも手を取り合う人間模様の描写が素晴らしかった。

いやはや読みごたえがありますな。

粗筋

有栖川有栖ことアリスが所属する推理小説研究会の4人はキャンプ合宿で矢吹山を訪れます。
そこには彼らと同様の目的の学生が13名おり、総勢17名で数日間過ごすことになりました。

親睦を深めるため主人公たちはパーティーゲーム「マーダー・ゲーム」を提案。
ゲームは大いに盛り上がり、学生の絆は確かに深まりました。

これで楽しい休日になる。その夜は誰もそれを疑わなかったでしょう。

しかし、翌朝にかけて矢吹山が噴火し、一同は山に閉じ込められることになります。

更にメンバーの1人が行方不明となり、不穏な空気が辺りを包みます。

果たして無事に下山できるのか。なぜ行方不明になったメンバーがあらわれたのか。

こうして命を懸けたマーダー・ゲームが幕を開けるのです。

事件

動機はなく、頼りになるのは証言と証拠のみ

アリスは推理能力はありませんが、事件を解決する全ての証拠を手に入れています。
探偵役の江上にも伝わってない情報もあるので、いわゆる読者だけの助手と言ったところでしょうか。

初対面のメンバーが多いので、動機の線から推理はできません。
また、殺害方法も刺殺と確定しており、トリックを弄してもいない。

純粋な推理をするための下地はできあがっていると言えるでしょう。

災害が故に事故か他殺か分からない

本書は火山の噴火によるクローズドサークルとなっています。
そのため、行方不明になった数人は事故か他殺かはっきりとわからず、これも推理要素になっているのです。

もし生きていたらソイツが犯人ではないか。メンバーの疑心暗鬼が極限の状況を作り上げています。

クライマックス

苦しく切ない月光ゲームの集大成がラストにある。

江上の暴いた真実、そして真犯人の動機。
それは受け入れがたいものがありました。

いったいなぜこんなことに。最も危険なクローズドサークルの結末はいかに。

まとめ

フーダニットの探偵小説にふさわしい傑作。
1989年の作品でありながら硬い文章はなく、推理小説初心者もするする読めると思います。

スポンサーリンク