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作品情報

作者:白井智之
出版社:角川文庫

粗筋

謎の女性「晴夏」に狂わされるニセ作家の牛男

30万部の売り上げを出した「奔拇島の惨劇」の作家である牛男。
実際は亡き父の盗作であり、本人はただのプータローでしかありません。

ちょっとした小遣い稼ぎが目的だったので、本格的に作家を目指すわけでもありません。
このまま一発屋として消えるつもりでした。事実10年後にはデリヘルの店長に転職しています。

ただ、この小説に興味を持った晴夏と出会い、彼の人生は大きく歪まされています。
ファンと自称して牛男に近づいてワンナイトするのですが、10年後に起きる孤島の事件に巻き込まれるきっかけを作るはめになったのです。

孤島で次々に発見される変死体の謎

孤島に招かれた5人の作家はなんと全員が晴夏と関係のある人たちでした。
中には婚約した人もいて、一同は困惑します。

いったいなぜ集められたのか。いったい孤島にはなにがあるのか。
言いようのない不安は変死体の発見で的中することになりました。

誰も助けに来れない孤島で次々に起こる不幸。
そして、ついに誰もいなくなり…。

果たして小説タイトルの真の意味とはなんなのか。
物語はどういった結末を迎えるのでしょうか。

トリック

正直一発ネタ感が強い。最初の衝撃を超えられなかった。
確かにすごいんだけど。いやまあ、んー。

過去に奔拇島で起きた惨劇が始まりの物語

孤島での事件より前に起きていた「奔拇島の大量死亡事件」。
牛男が盗作した小説はそれが元になっており、非常に意味深な内容となっています。

第1章「発端」では、その事件の概要を知ることができます。
もちろん描写するからには孤島の事件にも関連性があるのは間違いありません。

いったいそれは何なのか。それを推理するのが本書の醍醐味の1つでしょう。

誰もいなくなった時、事件が始まる

そして誰もいなくなった時、本当の「事件」が始まる

帯のコメントより

これが全て。というか、これ以上のトリックは何を言ってもネタバレになります。
タイトル通り「そして誰もいなくなった」をオマージュした作品となっており、登場人物が全員死にます。

ただし、本作はそこで終わりではない。むしろそこからが始まりと言って差し支えないでしょう。
ここまでは間違いなく名作。ただ、ここがクライマックスだった感が否めない。

後出し情報が多く、真実にいまいち納得できない

推理作家が集ったこともあって、各々が事件について推理を披露します。
真実は1つなのでほとんどが間違っていますが、流石と言うか理にかなった内容ではありました。

ただ、肝心の真実がどうにも納得できない。
もっともらしく言ってますが、それらの証拠は一切出てきてません。憶測に憶測を重ねているようにしか思えないのです。

どんどん新情報が出てきて解決するもんだから置いてけぼり感がすごい。

まあ、状況的に現場をじっくり調査する人もいなかったので仕方ないとも思いますが…。

特殊設定ミステリを楽しむ気持ちならアリ

本作は1つの超常現象が存在し、それが事件に大きく関わってきます。
それを楽しもうと考えるのであればアリです。実際、中々にショッキングな内容でした。

先ほどの憶測についても特殊設定なら致し方ない面もあります。そもそもが理解の及ばない話なので、普通の推理小説と同列で考えるとおかしくなります。

クライマックス

唐突に頭脳明晰になる牛男に違和感

いや、コイツこんな頭良くなかったやろ。
最後の最後で牛男が推理を披露することに違和感しかない。

アイリの受け売りかとは思ったのですが、セリフを読むに自分で解いたっぽいんですよね。
作中のどこを読んでも有能描写なかったので面喰いました。大人しく傍観者になっていればよかったのに。

これからどうなるのか気になる終わり

解決しているようで解決してない。これ、この後どうなんねん。
それぐらいとんでもない状況で幕を閉じます。

どう考えてもバッドエンドに直行する未来しか見えません。
まあ、その後を描くと本がもう1冊必要な程度のボリュームは必要になりそうではある。

あくまで孤島で起きた事件に焦点を置いた話。と考えれば納得できなくはありません。

まとめ

序盤のワクワク感が全て。後半の謎解きは人を選ぶと思います。
意外性はナンバー1だったよ。それは間違いない。

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