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作品情報

作者:城平京
出版社:創元推理文庫

粗筋

二部構成の作品であり、登場人物も変わらない珍しいタイプの小説。
謎解きもしっかりしており、面白かった。

まあ、帯の「第一部で読むのを止めないでください」煽りは過剰すぎるきらいはあるか。

童話「メルヘン小人地獄」になぞる連続殺人事件

多数の新聞社に送り付けられた不気味な童話。
復讐者となった小人が凄惨な連続殺人事件を行う内容で、現実でも同様の事件が起こるようになります。

第一の被害者は藤田恵子。三橋荘一郎の家庭教師先の妻であり、やがて彼は恵子にまつわる因縁に巻き込まれるようになるのです。

それこそが童話に登場し、現実の事件のカギにもなる毒薬「小人地獄」。なんと実在する毒薬なのです。

詳しい効能は不明ですが、童話を読む限り製造法はあまりにも凄惨。決して存在して良い薬ではありません。

  • いったい毒薬はなぜ産まれたのか
  • 恵子とどういった関りがあるのか
  • 殺人事件の犯人は誰なのか

混迷を極める事件に三橋は巻き込まれることになります

突如、三橋の前に現れた犯人が突き付けた要求

犯人は逃げるもの。その常識が打ち破られます。
唐突に三橋の前に現れ、無茶な要求をするのです。

しかも彼が断われない狡猾な人質を出し、三橋は犯人の絡め手に窮してしまいます。
このままではすべてが最悪に向かってしまう。

彼は友人であり、名探偵の瀬川みゆきを頼ることになりました。

瀬川こそが第二部の主役であり、第一部は彼女の凄さを説明する序章に過ぎません。

その他も第二部を補完する内容であり、だからこそ見出しで「第一部で読むのを止めないでください」と書いていたわけですな。
まあ、そこまでの驚きあるか?あるか・・・。

第二部で明かされる瀬川の過去と藤田家の因果

第一部で殺害された藤田恵子。
第二部の事件はその藤田家で再び起こりました。

いったい今度の事件はなんなのか。真実に近づこうとする瀬川に過去のトラウマが襲い掛かります。
また、彼女を試すかのように二転三転する事件。

そして、最後に明かされるあまりにも救いのない藤田家の因果。
いったい救いはあったのか。私は探偵としてなんなのか。

彼女の苦悩で物語は締めくくります。
割と探偵の意義を問う作品は多いんですよね。

https://kamo-life.com/gurenkan

トリック

面白い。しっかり考えられている。

トリック自体は安易で、実行犯の解明も早い

登場人物もそんなに多くなく、第一部に至っては犯人の自供まである。
また、童話の存在で殺害方法まで明確です。

なので、フーダニットやハウダニットでの爽快感はありません。

ホワイダニット好きは読み応えあり

一方でなぜ殺したか?これが最後の最後まで本当に分からない。だからこそ振り回される。

自供する犯人。証拠もある。でも、動機が分からない。
動機がない故意の事件は成立するのか。嘘の真実に踊らされていないか。

第二部で瀬川は今までにない苦難に見舞われます。誰を信じて良いのか分かりません。
鉄の意志を持って事件を追求しますが、状況は二転三転していきます。

ハウダニットをここまで重視する作品は中々ありません。だいたいが自供とともに言っちゃいますからね。
犯人が分かっても動機が曖昧ってのは面白いなと。

被害者の深堀がイマイチ

これがもう少し欲しかったなと。
みんなあっさり死ぬんで過去の事情あんまありません。

ていうか、大部分が冒頭ですでに死んでますし。第二部の被害者とかあんまりだろ。
恵子の過去こそ事件に関係してますが、恵子自体は速攻で死ぬので話に絡んできません。夫と娘との交流もうちょい欲しかった。

このため、事件発覚特有の緊張感がないんですよね。なんで死んだ!?怖い!みたいな。

予定調和というかなんというか。まあ、しゃあないのかもしらん。

クライマックス

悲劇の真実。誰が悪かったのか

第一部は序章。第二部でそのすべてが実を結びます。
まあ、その実は瀬川のトラウマを爆発させるものだったのですが。

最初からバッドエンドが決まっていた物語と言うのでしょうか。
そういうわけで後味の悪さは覚悟してください。誰も喜ばねえ。探偵の無力さを思い知らされる。

まとめ

読みごたえがあり一気読みした本書。
人の感情をメインにした作品かなと思います。ホワイダニット好きにオススメ。

一方で推理小説の緊張感はありません。ある意味で淡々と事件が解決します。この辺は好みが出ると思う。

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