目次
作品情報
メーカー:レジスタ
価格:990円
プレイ時間:約20時間
販売サイト:
雑感
大ボリュームの深海サスペンス。
閉鎖空間特有の緊張感が物語を盛り上げ、深海の知識を学べるのも魅力の1つ。
バッドエンドが確定した事故の追体験なので、内容は暗めです。
そのボリュームも相まって人を選ぶ作品とも言えるでしょう。
なお、名作Ever17リスペクト作品とのことです。
ゲームシステム
複雑な分岐の無いADV
選択肢はほとんどなく、基本は一本道。
何度もSTARTからやり直すことで、様々なエンド(可能性)にたどり着けます。
なお、視点は主人公メインですが、EXTRAでは他の登場人物の視点を回想を見られます。
各々の過去をしっかりと書いているので、すべての登場人物に愛着が湧くことでしょう。
BGMやCGもありと990円にしては破格の内容
しっかり作ってる。BGMは全てオリジナルという徹底ぶり。
CGの枚数も990円なら十分すぎる量でした。
更に歌もありますからね。予算大丈夫だったのか?
シナリオ
終わってしまった事故の追体験
水深700mの海底に沈んだ。潜水艇SHHEPⅢ。
無事に生存できたのはわずか2名という未曽有の大事故でした。
そう、物語で語られる水難事故は過去の話なのです。
しかし、生き残った主人公の片桐はその現実に納得できませんでした。
どうすれば、彼女たちは生きてあの海を出ることができたのか。
作品紹介分より
もし、違う選択をすれば、結果は変わっていたのか
「たられば」を実際に検証し、片桐はせめてもの救いを求めます。
あまりにも辛い、しかし、気持ちは理解できる。そんな切ない物語が「デイグラシアの羅針盤」なのです。
船内に潜む脅威に立ち向かえ
ただ水難事故を解決すれば良いと言う話ではありません。
深海で予想だにしない「脅威」に襲われるのです。
- 1つは妨害者。明らかに人為的な妨害で外部との連絡が遮断されている。
- もう1つは不確定要素。深海だからこそ発生する超常現象
次々と襲い掛かる難問に立ち向かう主人公たちに目が離せませんでした。
もちろん超常現象等はフィクションですが、よく設定が練られています。
もしかしたら本当に起こり得るのでは…?という恐怖を感じました。
近未来ということで登場するツールもハイテクなものばかり。
深海SFとして実に面白い作品です。
海洋恐怖症の人は要注意
けっこう怖い。
深海での沈没だけでも恐ろしいのに潜水服を着て船外に出ることもあります。
闇が広がる中で恐怖を抑えて歩き続ける登場人物を見て、プレイヤーも息苦しくなることでしょう。
ただ、話の大部分は明るい船内なので、致命的に海が無理な人でない限りは耐えられます。
海にまつわる史実や雑学を学べる
海にまつわる史実や都市伝説、果ては生物学や化学まで、あらゆる雑学を本作で学べます。
- 洞爺丸事故
- パンスペルミア説
- フォスダイク文書
カバーの範囲が広く、よほどの海マニアでもない限りは知らない雑学が1つはあるでしょう。
また、深海は宇宙と比較されるほどミステリアスな場所と言うこともあり、宇宙科学も話に絡んできます。
知らない知識をどんどん学べる楽しさが本作の最大の魅力と言っても過言ではありません。
大長編なので、プレイには根気が必要
990円のボリュームじゃない。制作陣の本気が伝わってくる。
最終的には、一連の事故に関わる全ての真相を暴くことになります。
謎が次々と明らかになる終盤の爽快感は格別。SFサスペンスの醍醐味と言えるでしょう。
ただ、片桐の目的はあくまで「全員が無事に帰れる可能性の模索」なので、真相究明は最後まで後回しになりがち。
そもそも悲劇は確定しているので、状況が悪化し続けるだけの物語を読むことになり、これが中々にきつい。
盛り上がり箇所が終盤に固まっているので、ノベルゲー初心者にはオススメできません。
コメディパートは癖が強いか
ツッコミ役が片桐しかいないのですが、その片桐自体もちょっとおかしい。
ボケ倒しで収集がついていないんですよね。
正直、若干の寒さを感じます。まあ、この辺は好みがあるかもしれない。
登場人物
誰1人かけてはならない。
彼ら全員がいるからこそ本作を名作たらしめています。
片桐一瀬
行動力があり、自己犠牲の精神に溢れる主人公。
ともすれば実に頼りがいのある男と思うでしょうが、諸事情でノイローゼ気味になっています。
唐突に感情が爆発したり秘密を抱え込んだり嘘をついたり。
あまりにも自分勝手に動くので、見ていてイライラします。お前…ほんっとに…もう!
まあ、深海にいるだけでストレス過多だからね。仕方ない。
それに何だかんだでリーダーシップを発揮しているので、いないと困ります。
柊乃蒼佑
みんなのお父さん。
船医兼メンターとして、メンバー内の諍いを諌める役目を担っています。
折衷案を考えさせたら彼の右に出る者はいないでしょう。
人命を優先するが故に思い切った決断ができず、アイデアが無難になりがちなのが玉に瑕。
百井縁
融通のきかない添乗員。
思考が固まりやすいので、彼女に一度でも敵視されたら話をまともに聞いてくれません。
責任感が強いが故にメンタルも不安定気味。主人公の次に爆発しやすい人物です。
ただ、他の女性陣が軒並みぶっ飛んでるので、相対的に一番マトモ。どうなってんねん。
野村灯理
常人に見せかけた狂人。妹がいないと手に負えない。
重度のシスコンなので、常に居場所を把握させておかないと危険。
逆に言うと、把握させておけば普通の女の子です。一転して明るいムードメーカーに。
状況が状況だけに仕方ないんですけどね。
トラブルに巻き込まれた一般人に過ぎないので、一番の被害者なのは間違いありません。
西芳寺ときわ
バランスブレイカー。知識量がえぐい。
彼女が本気を出せば、大抵の物事は解決します。さすがは天才美少女。
が、あまりにも常識外れの言動を繰り返すので、トラブルを起こすほうが多い。
彼女とどう仲良くなるか。どう制御するか。それが脱出のカギになるかもしれません。
ギャグ担当でもあり、彼女がいないと物語はシリアス一辺倒になります。
リュミエール=光理
不思議ちゃんですが、もっと酷い(ときわ)のがいるので相対的に普通。
本作では貴重な清楚系でもあります。癒しやぞ。
そんな誰とも衝突しない優しい少女なのですが、間が悪いのか色々と不憫な目にあいます。
まとめ
読み応えのある深海SF。
大長編で用語も多く、軽く読める作品ではありません。
かなり安いので、とりあえず買ってみても後悔はしないでしょう。