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作品情報
作者:前川裕
出版社:講談社文庫
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雑感
無難な刑事小説。読んで後悔もしないけど良かったともならない。
衝撃の展開がほとんどなく、淡々と進んでいく印象。
登場人物もいまいちインパクトを感じない。リアリティがあると言えばそう。
粗筋
殺人事件はパパ活からのトラブルか?
国会議員秘書の男性が殺害され、重要参考人としてパパ活女子大生が指名手配された。
しかし、程なくして重要参考人の首吊りしたいが発見される。
担当外の無紋は刑事課の徳松からの情報提供で事件に関わるようになる。
無紋が気になったのは遺体に彫られていたJのタトゥー。
果たしてJとは何か。無紋はその謎を解明しようと動き出す。
公安の杏華が絡み、事件は一変する
警視庁から女性管理官が出向してき、早い段階で無紋に接触してきた。
彼女の目的はいったい何なのか。国会議員秘書殺人事件との関りがあるのか。
訝しがる無紋とは別に当の杏華も現状に困惑した。
彼女に指示を出した上司であり恋人でもある浜岡の思惑が分からない。
いったい何をすればよいのか。
立場の違う2人の思惑が交錯するとき、事件は予想外の結末を迎える。
登場人物
無紋の人物描写が浅く感じる。
気になることを徹底的に調べる「こだわり」が彼の長所なのですが、それを直接的な言葉で説明してるんですよね。
「こだわり無紋たる所以」だとか「細部にこだわる無紋らしい」だとか。
地の文や登場人物の言葉で「彼は凄いんだぞ」って言われてもなぁって感じです。
しかもくどい。何度も同じことを言ってくる。もう分かったんだって。
ていうか、それでは何も知らない読者には凄さが伝わりません。
もっとこう彼自身の行動で示してほしかった。
また、人当たりが良すぎて、ライバル的な存在が1人もいないのも辛い。
今迄の刑事小説の主人公とまるで違います。
上層部の考えにも柔軟過ぎて人間ドラマが全くない。
総じて、主人公としてキャラが弱いと感じてしまいました。
事件
公安との水面下での戦い
無紋は波風を立てない男ですが、事件には警察組織が横やりを入れてきます。
特に公安が厄介なので、公安が絡む作品が好きな人にオススメ。
ただ、いくらなんでも公安がファンタジーすぎる気はしました。
公安の闇は「朽ちないサクラ」でも書かれましたが、こっちの方がやばい。
中盤までリアリティがあった分、良くも悪くも面喰った作品です。
みんなが協力的で壁に全くぶつからない
無紋の人柄と言うべきでしょうか。聞き取り調査でつまずくことがほとんど無い。
みんなが友好的に接してくれるんですよね。
警察組織でそっけない人はいますが、あくまでお役所仕事ってだけ。
ここでも紆余曲折はほとんどありません。
杏華だけかたくなですが、彼女を落とすことで物語終わるから致し方ない。
クライマックス
犯人の動機がこっわ。思想犯の極致か。
でも、こういう犯人は小説では珍しくない。なるほどなとは思う。
人間の思想を見る尾言う意味でインパクトのある結末でした。
最後まで読んだかいはあると思う。
まとめ
公安の作品が好きならアリだと思う。
ただ、警察小説らしい衝突がほとんどないので、その辺は不満でした。
流石は「逸脱」刑事と言ったところか。