作品情報
作者:阿津川辰海
出版社:講談社タイガ
雑感
エンタメとして消費される推理小説へのアンチテーゼ的作品
からくり仕掛けの館が舞台なので、トリックも中々に奇抜。
トリック重視の方にオススメの内容に仕上がっています。
また、「謎解きを面白がる探偵への警鐘」も書かれており、ただの推理小説には収まりません。
解決しただけでは終わらない。その後を考えることも探偵に求められる資質だと。含蓄に富んだ小説でした。
難点として探偵の思わせぶり描写がやたらと多いです。しかも2人いるもんだから酷い。
推理小説の定番ではありますが、個人的にはこういうの好きじゃない。情報はすぐ出してほしいよね。
この辺は良くも悪くも王道の推理小説と言えるかもしれません。
粗筋
憧れの文豪に出会うため合宿を抜け出した田所と葛城。
無事に館に辿り着いたものの落雷による山火事が発生、館に閉じ込められることになってしまった。
館に避難したメンバーは総勢9名。一癖も二癖もある人物ばかりだが、ひとまずは協力体制を取ることになる。
ところが、翌日に館の住人の1人・つばさの圧死体が発見され、事態は急展開を迎えた。
事故か殺人か。もし殺人なら犯人は誰なのか。
刻一刻と火の手が館に迫る上、互いを信用できない極限状態が続く。
真実を暴き、後顧の憂いを断ってから館からの脱出を目指すべきと主張する葛城。ツバサの件は保留にして生存を優先すべきと考える避難者。
果たして真実は明らかになるのか。タイムリミットが迫る中、一同が下した決断とは。
事件
探偵の意義を考える斬新な切り口
探偵の意義をひたすら突き詰める異色の推理小説として非常に面白い。
本作では探偵役が葛城と飛鳥井の2人いますが、探偵らしいのは葛城で、飛鳥井は徹底的に真実の追及を妨害します。
飛鳥井も高校時代は真実を追い求める一般的な探偵をしていました。
しかし、ある事件のせいで探偵業を引退。二度と推理をしない決意をしていたのです。
それが葛城には許せません。事件が起きたのならそれを解決するのが探偵の役目ではないか。
2人の考えは最後まで平行線のまま。そして、あまりにも救いのない結末を迎えました。
推理とはエンターテインメントとしてワクワクするものでないといけないのか。
否。断じてそれはありえない。人が死んでいる。悲しんでいる人もいる。
それを娯楽として楽しむのは人ではない。ハッピーエンドが許されるわけがない。
探偵の罪を告発する飛鳥井の言葉が重いんだよなぁ。推理小説好きの僕に対しても耳に痛い言葉でした。
迫りくるタイミリットにより高まる緊張感
真実の追及を妨げる原因。それこそが差し迫る炎の海です。
山火事の延焼は続いており、館を飲み込むのも時間の問題。
館に迫る炎。各章のタイトルに全焼までのタイムリミットが示されており、緊張感のある物語を楽しめました。
少しでも延焼を防ぐための試みも行われています。サバイバル小説としても中々の完成度でした。







