作品情報
作者:浅見理都
出版:KC KISS
巻数:全7巻
粗筋
警察官の父を放火殺人で亡くした山下心麦。
容疑者は早々に捕まり事件は解決したかに思えたが、顔なじみの屋台店主から受け取った父の遺言書には衝撃の事実が書かれていた。
曰く「私が死んだとき、真っ先に捕まる容疑者は冤罪だ」とのこと。
さらに遺言書には松風弁護士に容疑者の弁護を依頼するように書かれていた。
手紙の内容はほとんど理解できない。でも、死んだ父のために何かをしてあげたい。
大きく動揺しつつも事件の真相を暴くべく心麦は松風の元に向かうのだった。
登場人物
心理描写が秀逸のヒューマンドラマ
人間の善性と悪性を詰め込んだような作品。
父を失った悲しみ、自分の知らないところで事件が動いている不安や苛立ち。
感情のジェットコースターの中で、それでも懸命にもがく心麦がいじらしい。
松風弁護士も良いキャラをしており、おふざけとマジメを両立している本書の清涼剤として活躍します。
一方で人間の怖さの表現も一級品。特に心麦の叔母が本当に厭味ったらしく不快感が抜群でした。
警察の赤沢も表面上は心麦に優しくしていますが、言動全てが胡散臭い。
心麦と松風以外は何を考えているか想像ができません。この辺はミステリー特有の面白さがあります。
ドロドロした人間関係が苦手な人は覚悟しておいた方が良いでしょう。
登場人物が多すぎて収拾がつかない
真犯人を分かりづらくさせとはいえ人数が多すぎる。
これで全員に役割があるのなら良いですが、必要性を感じない輩が多い。
阿南検察官や松風の父は別にいなくても本筋に影響しませんし、心麦の叔母は不快感をもたらすだけの存在でしかありません。
登場人物全員に過去回想があり、そこで登場した人物が現代で再登場するのが更にキツい。鼠算式に関係者が増えるので、もはや収拾がつきません。
しかも結婚やらなんやらで名字が変わりますからね。そこも推理要素ではあるものの流石に大変過ぎた。
コミックの登場人物紹介だけではカバーできてないよなあ。途中から名前を聞いても「誰?」って感じです。
何度も読み返さないと理解できない。ヒューマンドラマに興味はなく、謎だけを求める人には苦しいと思います。
事件
2つの事件が絡み合い、複雑化する謎
資産家の家族6名が首吊り死体で発見された東賀山殺人事件。その20年後に起きた山下春生元刑事の放火殺人事件。
前者は遠藤力郎、後者は彼の息子である友哉が容疑者になっています。なお、力郎は死刑判決が確定済み。
しかし、それに異を唱えたのが死んだ春生だったわけです。
自分を殺した人間は友哉ではないことを知っていた父。2つの事件はどんな関係があるのか。心麦は松風とともに事件の真相に迫ります。
過去と現在の事件が密接に関わるのは推理小説の王道展開。謎がどんどん増えていく序盤は非常にワクワクしました。
主人公が活躍しないクライマックス
意外性を狙い過ぎた感はある。登場人物がやたらと多いので、どんでん返しはやりやすいんでしょうが、真相は正直イマイチでした。
キャラの深堀の差が激しいせいでしょうか。心麦と松風を除けば、赤沢刑事と神井記者、容疑者の友哉以外は印象に残らず、彼ら以外が意外な行動をしてもピンと来ません。
最後の最後で心麦と松風が傍観者になっており、カタルシスがないのもマイナスポイント。結局、この2人の行動は事件にそこまで影響していません。彼らを取り巻く環境が勝手に暴れまわっただけです。
もはや彼女らは主役ではないのでは。そう思うぐらいに置いてけぼり感が凄かった。
何度も言うようにヒューマンドラマです。心麦の過去を明らかにし、彼女が前を向いて歩くまでを描いた漫画なのです。殺人事件の真相を無視すれば良作なのは間違いありません。

