目次
作品情報
作者:浅見理都
出版:KC KISS
粗筋
父の死に隠された闇を暴く少女と弁護士の物語
本作の主人公は山下心麦。
幼いころに母を亡くし、警察官の父春生に育てられてきました。
その父も1話で放火殺人にあい、死んでしまいます。
容疑者は早々に捕まったため、世間の関心はすぐになくなることでしょう。
私はこれからどうしよう。
思考のまとまらない心麦は父とよく行く屋台にいきます。
そこで渡された1つの手紙。それは父の「遺言書」でした。
曰く、「私が死んだとき、真っ先に捕まる容疑者は冤罪だ」とのこと。
いったいどういうことなのか。なぜ父は自分の死を予見していたのか。
何一つ理解できないまま彼女は同封された300万円を手に取ります。
「弁護士の松風義輝に依頼し、彼の無罪を晴らしてほしい。そのためのお金を同封している」
手紙の内容はほとんど理解できない。でも、死んだ父のために何かをしてあげたい。
こうして彼女の物語が始まったのです。
2つの事件が絡み合い、複雑化する謎
そもそも冤罪にかけられた青年は誰なのか。
彼の名前は遠藤友哉。2000年に起きた東賀山殺人事件で死刑判決となった遠藤力郎の一人息子です。
警察の見解では、それに関わっていた山下春生を逆恨みし、犯行に至ったとのこと。
資産家の家族6名が殺害される。警察は第一発見者の遠藤力郎の逮捕に踏み切った。
動機は多額の借金。そのことを周囲に噂されていると思い込んだ末の犯行とのこと。
殺害方法は全て絞殺。資産家の旦那を脅し、全員の遺体を階段に吊るさせたと思われる。
過去の猟奇殺人の犯人の息子が逮捕される。そして、それを冤罪だと言う父。
一連の事件はどんな関係があるのか。どんな闇が潜んでいるのか。疑問は尽きません。
見所
感情の機微が表情で良く分かる
流石は女性誌の連載漫画と言うべきでしょうか。とにかく人間の感情を丁寧に描いている。
父を失った心麦。悲しみ、疑惑、イラダチ。年頃の少女らしく、感情が渦を巻くように変化していきます。
その感情がバレないように押し殺した表情は何とも言えない悲しさがあります。
そんな彼女を支える弁護士の松風。彼も良いキャラをしています。
本作ではおふざけキャラになるのでしょうが、しめるところはきちんとしている大人の男性。
ギャグもシリアスもこなせるなくてはならない存在と言えます。
表面上の優しさの描写がうまい
叔母さんと父と同じ警察の赤沢さん。
心麦に優しく接しているように見えますが、その笑顔がとんでもなく胡散臭い。
叔母さんの影のある笑顔。おそらく心麦は遺産目当てだと考えているのでしょう。
それは作中で描写されていないので、真偽は不明です。
同様に赤沢さんも熱血漢に見えますが、何かを隠しているようにも見える。
心理描写が心麦と松風だけなので、他の誰もが疑わしく感じちゃうんですよね。
叔母さんには得体のしれない恐怖を覚えましたね。本当は優しい人なのかもしれませんが。
以上のように本作は人間模様に重点を置いたミステリー漫画と言えます。
1巻では事件の調査がほとんど進んでないですからね。人間模様オンリー。
気になる点
人間の醜さがきつい
先ほども言ったように叔母さんが中々に厄介。
2巻から本領発揮してマジで嫌な人間に描かれます。
松風さん以外みんな怖いんですよね。
そもそも明るいキャラが一切いません。波佐見ぐらいか。
人間関係のドロドロが苦手な人は気を付けましょう。性格の悪い叔母さんマジで無理。
まとめ
ヒューマンドラマとミステリーを融合した良書。
男性が読んでもはまること間違いなしです。