作品情報
作者:今野敏
出版社:集英社
雑感
伝聞だけを頼りに謎を解き明かす異色の推理小説
集めた情報を元に真実を究明するのですが、どれもこれも真偽がはっきりしないから面白い。
後から嘘だと分かったり信用していなかった情報が真実だったり。
主観で判断するとあっという間に足元を掬われる。そんな展開が続きました。
何から何まで斬新な内容、真実が分かった時の爽快感は格別。
シリアスではありますが、重い展開はないので気軽にサクっと読めるのも素晴らしい。
マスコミが活躍する珍しい小説でもあります。彼らに悪いイメージを持っている人にこそ読んでもらいたいですね。
粗筋
捜査が打ち切られた事件の継続捜査を行っている特命捜査対策室の黒田と谷口。
彼らに捜査二課の多岐川が「20年前に自殺した大学生」についての継続捜査を依頼したことで物語は動き始めた。
大学生の名前は春日井信之。ネズミ講の組織に所属しており、彼のバックにIT長者の藤巻がいたとの噂だが、それ以上の情報は意図的に隠されている。
いったいどんな闇が潜んでいるのか。黒田達は大きな謎に挑むのだった。
一方、デスクの鳩村はニュース番組「ニュースイレブン」が打ち切られる噂を聞き、不安を感じながら仕事をしていた。
藤巻が報道キャスターの香山を奪うために圧力をかけているとのことだが、あまりにも突拍子のない話で真実とは思えない。
しかし、それでも不安は拭えない鳩村は報道記者の布施から情報を聞き出し、独自で調査を始めるのだった。
事件
真実を話している人は誰なのか
20年前の事件なので、物的証拠はほとんど残っていません。
必然的に当時を知る人物への聞き込みが中心になります。
しかし、集めた情報の整合性が取れず、誰が嘘をついているかもわかりません。
真相に近づいているのか離れているのか。疑心暗鬼に陥いりながらも必死に足掻く登場人物たち。これこそが本書の面白い箇所でございます。
なお、あくまで人間模様の解明が全てであり、トリック要素は皆無です。一般的な推理小説を期待するのはやめましょう。
怒涛のクライマックスに目が離せない
情報が十分に集まった頃、ニュースイレブンの番組キャスター香山が誘拐され、事件は急展開を迎えます。
この誘拐は間違いなく藤巻が関わっている。布施のSOSで黒田達は香山の捜索を始めます。
彼女の発見と同時に明かされる真実。それはあまりにも予想外なものでした。
果たして20年前に春日井を殺害したのは誰なのか?誰が香山を誘拐したのか?虚偽の情報を流したのは誰か?
今までの情報が1つに収束する様は中々に圧巻。ぜひご自身の目で見て頂きたい。




