【粗筋】一次元の挿し木【感想】~数百年の時を超えた少女~

作品情報
作者:松下龍之介
出版社:宝島社文庫
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雑感
数百年前の人骨が義妹と一致する。これだけでも興味をそそられる内容です。
一見すると特殊設定かと思いましたが、一応は科学的に説明できるから面白い。まあ、ほぼファンタジーですが。
謎の暗殺者からの襲撃や逃亡劇も手に汗を握るものがあり、ラストは切なくもこれ以上ない内容になっていました。
なお、犯人の調査はしません。妹を追っていく内に向こうから接触してきます。
そのため一般的な推理小説とは異なります。とはいえ、人骨の謎はミステリー好きも大きく興味をそそれることでしょう。
粗筋
二百年前の人骨のDNAが行方不明の義妹と一致した。
悠はこの事実に混乱し、鑑定結果を担当した石見崎教授に相談しようとする。
しかし、石見崎教授は何者かに殺害され、話を聞くことは叶わなくなった。
更に人骨を巡って次々と関係者が殺害される事態が発生する。
いったい義妹は何者なのか。生きているのか。
義父は君に義妹などいない。全ては君の妄想だったと突き放す。
何もかもが信じられない悠。それでも義妹を見つけるため彼は前に進み始める。
事件
登場人物
アンニュイな雰囲気をまとう美男子。非常に優秀な研究者の卵なのだが、最愛の義妹が失踪してからメンタルをやられており、薬に頼った生活をしている。
やはり頭の良い主人公は読んでいて安心できます。
病んではいますが、自分のすべきことをしっかり理解して事件の真相解明に動いているから素晴らしい。
もっとも愛する義妹への執着が唯一の原動力であるため、周囲からは頭のおかしい奴と思われています。しゃあない。
序盤~中盤
もはや災害。訳も分からぬまま関係者がどんどん殺されていきます。
関係者の中に犯人が…というわけでなく、明らかな異常者が殺しまわっている様子。
更に悠が探している義妹を探しているらしく、悠が望まぬともいずれは対決することが確定しています。
とややこしく言いましたが、内容としては義妹の行方不明事件であり、殺人事件はそのついでです。
言ってはなんですが殺人事件などより義妹の安否が大事ですからね。
警察は殺人事件の犯人として悠を疑っていますが、知ったことではありません。
最初から最後まで義妹を軸にした物語となっています。純愛小説なんだよね、これって。
クライマックス
きれいに畳んだなあ。
ハッピーとはいかずともベターエンドとして後味の良い作品でした。
殺人鬼との駆け引きも面白く、読む手が止まらない。
義妹についてはちょっと悲惨ですけどね…。まあ、それは読んでみてのお楽しみ。
まとめ
きれいにまとまった行方不明事件。
科学をテーマとして作品としても読みごたえがありました。