目次
作品情報
作者:倉知淳
出版社:講談社文庫
雑感
- クローズドサークル
- 雪山
- 連続殺人
というTHE推理小説にふわさしい展開。
1997年の作品と言うことで携帯電話が普及しておらず、テレビの砂嵐描写が懐かしい。
展開としてはそこまで予想外ではありません。今では流石にもう使い古されていますね。
とはいえ、王道であるので普通に楽しめるのは間違いないでしょう。
なお、犯人の動機は現代ではタブー扱いです。今、同じように書こうものなら確実に炎上する。
タイトル考察
そのままの通り。
スターウォッチャーの星園が登場するからであり、それ以外の要素はない。
粗筋
陸の孤島となった雪山の山荘で起こる殺人事件
上司と喧嘩した和夫は左遷のような形で「タレント文化人のお付きの部署」に回された。
そこで出会ったのスターウォッチャーの星園。女性人気が高い彼のサポートを仰せつかったのだ。
胡散臭い奴とは言え仕事は仕事。和夫は星園のお付きとして、雪に囲まれた山荘に向かうことになる。
そこで集まった面々は星園に負けず劣らずの変人たち。自分は僕のように星園以外からもこき使われる。
これ以上イヤなことあがってやまるか。どうか何も起こらないまま無事に終わりますように…
しかし、到着した翌日。そう願った和夫の期待をあざ笑うかのように死体が発見されたのだった。
トリック・推理
注釈のおかげで、各章の概要がざっくり分かる
親切で挑戦的なこの注釈に騙されるな!
帯の文章より
こう書いてある通り、注釈も本書のトリックの1つです。
ではありますが、嘘は一切書いていません。読者がどう解釈するかです。
そう考えると、各章の予習としては中々に便利。
後戻りする際、読み直したいページにすぐ辿り着けるので、謎解き小説としてはかなりフェアだと感じました。
こういう読者への案内人は「時空旅行者の砂時計」にもいました。
内容を整理する仕組みとしてありがたい限り。
名探偵の解説が実に丁寧で鮮やか
一連の事件を最初から追うだけでなく、あらゆる可能性を全員の前で精査します。
アリバイは?選んだ凶器の意味は?犯人のミスは?
注釈や図のおかげで読者は事件の概要をしっかりと把握できます。
長編にありがちな「証拠や証言を忘れて回答編がいまいち分からない」と言った状況にはなりません。
まあ、かなり深く推理するので簡単に理解とはいきませんけどね。それでも助かる。
0から10まで読者に親切な設計でした。
クライマックス
しかしラストで驚かない者はいない
帯の文章より
確かにこの煽り文に偽りはない。少なくとも推理小説デビューした人は間違いなく驚愕する。
ただ、推理小説に慣れていれば、各章冒頭の注釈で犯人を予想できます。
少なくとも「仕掛け」の場所は分かる。トリックでもなんでもないメタ推理ではありますが。
とはいえ、クライマックスまでの積み重ねが非常に丁寧なので、やっぱり驚きはします。
全てを知った後に最初から読み返すと「はえ~」とはなった。それは間違いない。
まあ、このメタ推理は外れてくれ・・・!と願っていたので、そこは残念でした。
注釈に仕掛けいらなかったんじゃないかなぁ。ただ事実だけで良かった気はする。
まとめ
安定して楽しめる作品。
流石に使い古された内容なので、既視感は多少感じる。
推理小説初心者はぜひ読んでもらいたいところ。
たくさん読んでいる人には…うーん、微妙かもしれない。