作品情報
作者:飾守きょうや
出版社:角川ホラー文庫
販売店:
雑感
発想は面白いんですが、ドラマが無いと言うか。
結末が2つのどちらかで予想できるんですよね。
更にクライマックスまでの積み重ねが関係ない。最初と最後だけ読んでも話は繋がる。
謎解き要素もなく、色々と惜しいなという感想です。ページ数は少ないので、サクッと読めるのは利点。
登場人物
触れた人の後ろ暗い秘密が視える特異体質のせいで人付き合いを避けている大学生。
しかし、本来は正義漢であり、厄介毎に首を突っ込みがち。
無難に王道の主人公をしている。不快感はほとんどありません。
根暗なのは特異体質のせいで、活用を始めてからは前向きな性格に戻りつつあります。
また、石橋を叩いて渡るタイプで危なげなシーンが少ないのもポイント。
そのせいで刺激的な展開がラストまでないのは残念かもしれない。
事件
連続通り魔殺人事件。被害者は殺された後に何度も切り付けられた跡が残っている。
能力を鍛えながら殺人の証拠を掴め
ミステリーというより能力ものですね。
来るべき日に備えて能力を見直し、実際に行動してPDCAを回す。
そして、最終目的である「佐伯が犯人の証拠取得」ができるまでスキルアップをしていくと。
この辺の試行錯誤は同じ特異体質小説の「七回死んだ男」もそうでしたね。
能力を鍛える中で本筋とは別に2つの事件を解決していきます。
そのため、3部構成の短編小説の集合体と思った方が良いかもしれません。
謎解き要素は一切ない
幻視によって最初から犯人が分かっているため、ホワイダニットもフーダニットもありません。
また、明らかな無差別殺人なので、久守は動機を調べる気もありません。
重要なのは証拠集め。そのためにどうやって佐伯の家に行くか。そこまでの過程が本書の全てです。
最初から犯人が分かっているからこその事件へのアプローチ方法。この辺は唯一無二の特徴と言えるでしょう。
まあ、結果として謎がほとんどないのは残念か。解決した時のスッキリ感は皆無です。
クライマックス
まあまあ衝撃ではありますが、どうにも煮え切らない。
- 結局、久守はこの事件を通してどうなったのか。
- 佐伯との友情はどうなったのか。
2つの明確な回答が用意されておらず、モヤモヤしました。
回答を出さないのが彼の結論だったと言えばそれまでですが。
正直、ラストの衝撃ありきで物語を進めていて、それ以外はオマケでは?と思ってしまうレベルでした。
まあ、どんでん返し系はそうなる傾向にありますが、もうちょい読後に何か感じ入る要素が欲しかった。
まとめ
発想は面白く、主人公も不快感がない良キャラ。
しかし、読後感は微妙で、心に残るものがあまりありませんでした。