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【粗筋】アナヅラさま【感想】~過去も未来も落としてしまえ~

作品情報

作者:四島祐之介
出版社:宝島社文庫

雑感

都市伝説がどのように広がり、変容するかを書いた作品。
都市伝説解体センターに近しいものを感じましたね。後味が悪いのもそっくり。

推理部分もしっかり作っており、オカルトミステリーとして申し分のない完成度でした。

ただ、性暴力やパパ活など性に関する負の部分を取り扱っている点に注意。このせいで事件はどんどん胸糞な展開へと転がっていきます。

ラストもちょっと恐ろしいので、ハッピーエンドを期待して読むのはやめましょう。

粗筋

もっと食わせてくれ。

底なしの穴の欲望にこたえるため、そして、己の欲望を満たすため「アナヅラさま」は今日も女を穴に落としていく。

今の時代は女を集める手段がいくらでもあるから楽だ。お金を渡して優しくすれば、疑うこともなくノコノコと着いてくる。
犯罪の証拠も使い潰した女も穴に落としてしまえば誰にも気づかれない。簡単だ。

…誰かの声が聞こえる。だったら過去も穴に落とせば消えてなくなるんじゃないか。
確かにそうかもしれない。やってみよう。きっとできるはずだ。

そして、「アナヅラさま」は今日も何かを穴に落としていく。

登場人物

小鳥遊穂香

プロ顔負けのボクサー兼私立探偵。豪快で気持ちの良い性格で、女性の恋人がいる。
過去に強烈なトラウマがあるらしいが…。

  • 女性を凌辱し、遺棄するアナヅラさま
  • 女性だけを愛する穂香
  • 穂香公認のストーカー兼助手の仁

など性に関する意識が一般的なそれと違う人物が多数登場します。まあ、穂香をこの中に含めるのは昨今のジェンダー的によろしくないのですが…。

彼女達以外の登場人物も全て「性」に関する事情を抱えており、男女のどうしようもない確執を感じざるを得ませんでした。

なので、本書は人にオススメしづらいんですよね。穿った見方をすれば男女のどちらか一方を糾弾しているようにも見えます。もちろん違うのですが。

正直、穂香も含めて心の底から好きになれる人物はいませんでした。どいつもこいつもどこかが壊れてる。

事件

主人公視点と犯人視点で紡がれる物語

本作は犯人(アナヅラさま)視点も用意しており、超常現象でないことは最初の段階で明かされています。

「全てを飲み込む穴」は正直オカルトですが、それ以外の出来事は全て人為的なのです。
だからこそ推理要素が出てくるわけで。行方不明者の足取りを追うことで、少しずつ「アナヅラさま」の正体へ迫っていきます。

刑事の養父や同じく「アナヅラさま」を追っているヤクザなど使える人間は何でも利用する穂香。
非合法な手段も厭わないため時には襲われることも。最後の最後までスリルある物語を楽しめました。

調査の過程も実に丁寧。少ない証拠から少しずつ真実へと歩みを進める推理小説の醍醐味を存分に満喫できます。

テーマこそ重苦しいですが、内容は王道の探偵小説でした。きれいにまとまっており、非常に読みやすい。

クライマックスで都市伝説の恐ろしさを知る

うわあ、こういうオチかあ。何というか都市伝説だからこその結末でした。個人的には非常に腑に落ちた。これしかないってレベル。

都市伝説は恐ろしい側面もある一方で、ある種の希望も孕んでいます。娯楽として消費するのもそうですし、事件の隠ぺいに使うのもですし、承認欲求を満たすのもそうです。

実際、殺人鬼は偶然にしろ「アナヅラさま」とされたことで、ちょっとした優越感を感じています。だからこそ行為がエスカレートしたとも言えるでしょう。
そして、その闇に当てられた人間はどうなるのか。殺人鬼を捕まえて終わりではないのです。

真相を解明し、根元を断つ。そうしなければ第2第3のアナヅラさまが生まれるだろう。本作の結末は都市伝説とは何たるかのアンサーになっていました。

まとめ

都市伝説と性犯罪を絡めたディープな探偵小説。
間違いなく面白いですが、気分爽快な展開にはなりません。人を選ぶ作品ですね。

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