作品情報
作者:下村敦史
出版社:中公文庫
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雑感
なんか思ったより普通だな…。
本格「館」ミステリーと評されていたので、十角館の殺人のような内容を想像していました。
しかし、蓋を開けてみれば館自体のギミックは大したことなく、登場人物同士の駆け引きがメインでした。
著者の自宅を舞台にしたという点では間違いなく唯一無二の作品。下村先生の自伝と思えば、アリとは思います。
ただ、推理小説を嗜む程度の僕にとっては惹かれる要素にならず、それ以外の部分も普通だなあという感想に落ち着きました。
よほど先生のファンでない限りはオススメしづらいですね。うーん。
登場人物
ミステリー界の大御所である覆面作家。何かが起こりそうなミステリアスな館を建築し、そこに作家や編集者、探偵を招く
意図的なのでしょうが、御津島以外の登場人物の魅力が全くない。
メンバーを引っ張る存在が皆無で、各人が好き勝手に行動しています。仲も悪いもんだから始末に負えない。
探偵もあまりにも空気で、急に謎解きを始めた段階で「あ、そういや探偵いたわ」と気づくレベル。ここまで影の薄い探偵も珍しい。
全ては御津島の手のひらの上であって、客人は舞台装置に過ぎなかったのでしょう。別に誰でも良かったんじゃないかな。
そんなわけで登場人物の描写を期待するのはやめましょう。そういう作品じゃない。
粗筋
何かが起こりそうな洋館を建てたい。
御津島の願望を形にした洋館がついに完成し、お披露目会として作家や編集者、文芸評論家、さらには探偵が招かれた。
洋館以上に覆面作家の御津島と対面することに緊張していた一同だったが、思った以上にあっさり登場し、見た目も一般的な中年男性と変わりない。
安堵と落胆を同時に感じつつ、お披露目会はつつがなく進行していった。
ところが、書斎に戻った御津島の叫び声が突如として屋敷内に響き渡り、場は一気に張り詰めたもにに変貌した。
なぜか御津島の死体はどこにもなく、しばらくして参加者の娘までも行方不明になってしまう。
いったい2人はどこに消えたのか。そして、事件を起こした犯人は誰なのか。
逃げ場のない猛吹雪の中で、ミステリー関係者の謎解き合戦が始まるのだった。
事件
ミステリー作家が用意した最高の舞台で謎を解け
- 消えた主の死体
- 森の中の別荘は猛吹雪で逃げられない
おあつらえ向きの動機も御津島自らが用意しており、まさに「何かが起こりそうな洋館」にぴったりの状況が出来上がりました。
あまりにも作為的な状況で自作自演を疑ってしまいますが、死体はフィクションではありません。
果たしてどこまでが御津島の計算だったのか。事件そのものよりそちらが気になってしまいました。
真犯人はそれなりに凝っていたんですけど、ここまで用意されているとメタ的に予想できてしまいます。初めてミステリー小説を読んだ人でも何となくいけると思う。
話の構造がしっかりしているとも言える。しっかり積み上げたうえでの真実で矛盾点は見つかりません。
すべてが予定調和でインパクトに欠ける
雑感でも言ったように館ミステリーと言うにはギミックが微妙。
アンフェアにならないよう冒頭で館の秘密を暴露しているので、当然と言えばそうなのですが。
最後もそうなるよなって感じ。逆にそうじゃない展開を期待していたぐらいに真っ直ぐな結末を迎えました。
だから、総評すると普通です。よくできていますが、それだけ。登場人物の描写が薄いのでカタルシスはなく、いわゆる衝撃の展開もありません。


