作品情報
作者:城戸喜由
出版社:光文社文庫
雑感
あまりにも主人公の頭がおかしい。その一点において奇書と呼んでも過言ではない。それ程の作品。
一方で事件は非常にスマート。推理小説の名に恥じない面白い物語を楽しめました。
カジュアルな文体でスルッと読み進められるのは評価ポイント。日常的に小説を嗜む人ならば半日で読了できるでしょう。
人を選ぶ作品ではありますが、賛否のどちらであっても読んで後悔しないと思います。他に似た作品を見たことがないので、間違いなく新鮮ではある。
粗筋
姉の御鍬が殺害された事件を解決するため、椿太郎は独自で捜査を始めることにした。
しかし、それは決して愛する姉の弔い合戦ではない。
どんなワクワクした真実が眠っているのだろう。そんな期待だけが彼を突き動かしているのだ。
また、彼は姉の残した「この家には悪魔がいる」というメッセージにも強い興味を抱く。
いったい誰が悪魔なのか。両親?兄?それとも僕?
メッセージの真実を知りたい。
こうして殺人事件と並行して、椿太郎は家族の調査にも没頭するのだった。
登場人物
無意識に相手の心をえぐる言葉を投げかける厄介な少年。一方で年相応のあどけなさも併せ持つ。
「選考会で賛否両論を呼んだ」と本の帯に書かれていましたが、椿太郎の人間性が理由かなと思います。
とにかく冷酷で他者と感情を共有できないサイコパスな少年。でも、妙に子どもらしい一面もある。
中二病を突き詰めた性格と言って良いかもしれません。合わない人はとことん合わないと思う。
他者への影響力が尋常ではなく、彼に関わった人間は心が完全に束縛されます。
彼の異常性に心酔する者、不快感や恐怖を抱く者。一度でも椿太郎に捕まった人間は彼が興味を失うまで逃れられません。
もはや椿太郎が黒幕ではないかと思うほどのえげつなさ。彼と関わった者の末路も本作の見所の1つです。
かなり人を選ぶ性格ではありますが、不思議な魅力があるのも間違いありません。
本書を楽しめるかどうかは椿太郎への感じ方にかかっているでしょう。
なお、両親や兄、姉も椿太郎に負けず劣らずのぶっとび具合で理解が追いつきません。
登場人物全員のキャラがここまで濃い作品も珍しい。異色のヒューマンドラマとして存分に楽しめました。どいつもこいつもクレイジー過ぎるよ。
事件
本書の全てがぶっ飛んでるかと思いきや、プロット自体は至極全うでした。
家族に隠された真実を知るため、椿太郎はあらゆる手段を講じます。
- 戸籍謄本を取り、両親の親族を洗い出す
- 事件現場を訪れ、容疑者のアリバイも確認する
- 兄の小説原稿を読んだ編集者にコンタクトを取る
調査方法がいちいち的確でムダがない。椿太郎には探偵の才能がありました。
異常な性格との温度差で風邪をひきそう。実に王道の推理をしています。
結末も文句なし。犯人を突き止め、「この家には悪魔がいる」の秘密も判明します。
ラストでは謎に包まれた清家の全てが明かされます。衝撃過ぎて何か感動しちゃったよ。

