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作品情報

作者:五条紀夫
出版社:新潮文庫

雑感

やはり天才じゃったか…。
ぶっ飛んだ設定の出オチ作品かと思いきや起承転結すべてに隙が無い。

謎の蘇生犯をめぐり、殺人犯の主人公たちが奮闘する話。
死んで生きての繰り返し。命のリレーのアンカーを誰にするかが本作の結末になるわけです。

聞けば聞くほど意味が分かりません。すべてが斬新で本当に面白いわ、これ。

登場人物

笹本健康

殺人事件の実行犯。常に冗談を言い本心を隠しがちだが、思慮深い性格。目的のために手段を択ばない非常な考えも持つ。

ただのユーモキャアキャラかと思いきや思考がかなりドライ。
殺人事件の計画を立てたのも彼であり、真相を追う上で拷問も厭いません。

しかし、そのすべては自分以外の誰かを守るため。情に厚い人間ではあります。
次から次にアイデアを出す知性も持ち合わせており、味方であればこれほど心強い男はいないでしょう。

事件

繰り返し行われる死者蘇生。
健康が殺したはずの住職を生き返らせた目的は不明。その後も町内会の住人すべてが何度も死と生を繰り返らせていますが、その意味も分かりません。

とはいえ、蘇生犯の目的は健康になって些細な事。
どうにかして死者蘇生を妨害し、今度こそ住職の息の根を止める方策を考えようとします。

ただし、町内会の人間も一枚岩ではありません。
健康に協力する者。健康を亡き者にしようとする者。何を考えているか分からない者。

健康はすべてを疑い、危機的な状況を何度も脱していくのです。

二転三転する状況に読む手が止まらない。最高の特殊設定ミステリーでした。

クライマックス

ついに判明する蘇生犯。そして、動機。
そう来るか!と度肝を抜かれる真実でした。あまりにも惨く、あまりにも悲しい。

死者蘇生の仕組み上、最終的に誰かは確実に死ななくてはいけません。
それは一体誰になるのか。健康の悲願である「住職の死」は遂げられるのか。

作者の筆が乗りに乗ったラストをお楽しみください。

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