全11巻の傑作ミステリーコミック。
読む手が止まらず1日で読破してしまいました。

登場人物全てに癖があり、闇がある。
そんな本作のネタバレ感想を書いていきます。ガチのネタバレなのでご容赦ください。

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主要人物

浦島エイジ

解離性同一障害であり、主人格を八野衣エイジ、作られた人格を浦島エイジとして区別しています。

父親がLL事件の濡れ衣を着せられ一家は破滅。
事件の真犯人への復讐を誓っています。理性を保つために楽天家の浦島エイジは作り出されました。

人を傷つける事ができない性格で、自分を殺した雪村を「許し」、消滅しました。
作中を通して情けない彼ですが、彼の慈悲が雪村を救い、雪村が真犯人逮捕に協力するきっかけを作りました。

八野衣エイジ

八野衣は浦島を調査の邪魔と考えていましたが、結果的に浦島のおかげで事件解決ができたのは何とも皮肉な話です。

本人は冷徹な男を徹底しており、浦島乙に強力なトラウマを植え付け、それ以外の人にも脅しを容赦なく使っています。
しかし、父親譲りの正義感を失ったわけではなく、人を切り捨てる事は出来ません。

彼に惚れていた畑中葉子が死んだときも激怒し、白菱正人に詰め寄りました。

作中父を貶めた人物を殺そうとしますが、最後までできませんでした。
それは浦島エイジの影響が少なからずあったのかもしれません。

本作は結局のところ、八野衣エイジが未来に歩くための物語だったと言えるでしょう。

雪村京花

エイジとの恋人であり、父親(白菱正人)を操作し、畑中葉子をLL事件と同様の手口で殺害した張本人。

表面上は明るく優しい少女ですが、幼少期の母親からの虐待により性格が歪んでいます。
LL事件で姉が殺され、虐待していた母は自殺。そのおかげで自由となりLL事件の犯人に心酔するようになりました。

LL事件の犯人(実際は濡れ衣ですが)の息子エイジに近づき、恋人になることに成功。関係を築くことになります。

浦島エイジがLL事件の犯人の息子とは言えない善人さに失望した風を装っていますが、実際は無償の愛を注いでくれた浦島エイジを必要としていました。

しかし、その事実に最後まで気づけず浦島エイジを消し、完全なエイジにすることを画策。
最終巻で八野衣エイジに指摘され気づかされましたが、その際の彼女の涙はあまりにも痛々しかったですね。

作中何度も死にかけながら生きながらえたのが良かったのか悪かったのか。それは今後の彼女の生き方にかかっているでしょう。

真明寺麗

浦島エイジの協力者。彼女がいなければエイジはすぐに死んでいたでしょう。

幼少時、LL事件の被害者が拷問されていた場所に迷い込みます。
すぐに脱出し、警察に保護されますが、恐怖のあまりにしばらく口を開けませんでした。

そのせいで被害者を助けられなかったと思い、贖罪の意味で犯人探しに協力をしています。

推理力が凄まじく、早々にエイジが解離性同一障害と気づき、見分け方まで看破。
最後まで最高のパートナーとして2人のエイジを助け続けました。

信じられない人間ばかりの中、最後まで傍にいた彼女はエイジの救いとなったのは間違いありません。

浦島亀一

LL事件の真犯人でエイジの全てを壊した元凶。

痛覚が後天的に失われており、その痛みを知るために拷問と殺害を繰り返してきました。
幼少時より死が自分の何かを埋めてくれるとも思っていたようです。

最後まで彼は後悔を口にすることはありませんでした。
結局、彼がなんだったのか。どうなるのかは分かりません。

しかし、もはやエイジにとってはどうでも良い事なのでしょう。

絡み合った複数の事件

本作が複雑で面白いミステリーとなったのは複数の事件が絡み合った結果です。

まず本作のキーとなるLL事件。
浦島亀一による犯行でしたが、この事件の解決が本作の目的でした。

次にLL事件の模倣。
雪村京花と白菱正人が共謀し、畑中葉子を殺害しました。
この事件により、八野衣エイジの操作はかく乱されます。

そして、県警の猿渡と桃井による八野衣エイジの父・八野衣真の殺害。
エイジにとっての直接的な仇と言えます。桃井の秘密を守るための犯行でしたが、このせいで八野衣真の無実を示す証拠がなくなったのです。

LL事件を煙に巻く事件の連続で、八野衣エイジは何度も父親の無実を諦めかけます。
しかし、一縷の望みをかけ調査を続けた結果、ついに真相へとたどり着けました。

くしくもそれは彼が作り上げた人格「浦島エイジ」の功績だったのです。
彼が築いた交友関係が事件を迷宮入りとさせませんでした。

序盤から終盤までの話の組み立てが本当に素晴らしい。一部の隙もありませんでした。

心に傷を負った人間たち

本作はほとんどの登場人物が心に傷を負っています。

冤罪の末殺された父親の息子、虐待された娘、贖罪に生きる少女。
彼らの暴走はとうてい許されませんが、周囲の人間の無責任な正義感さえなければ回避できた未来かもしれません。

ネット炎上は現代でも珍しくなく、誹謗中傷は止まりません。
本作はそういった無責任な正義感に警鐘を鳴らしているのかもしれませんね。

最後に

わずか11巻ながら重厚なストーリーで最後まで飽きずに読めました。
本用に良い作品に出会えたものです。

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