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作品情報

作者:筒井康隆
出版社:新潮文庫

雑感

予測可能回避不可能。

裏表紙の粗筋で「メタ・ミステリー」と書いてますし、作品内も怪しい文章が目白押しです。
なので、最初の違和感にはすぐに気づけます。

が、本書は読者が最初の違和感に気づく前提で構成されており、そこでやっとスタートラインです。

気づいた違和感を材料に隠された真実に気づけるか?すでにトリックは見せているぞ。
そんな作者の挑戦的なメッセージを感じます。

なんとなく予想はできても作者の掌からは結局逃れられない。
二重三重にはりめぐられたトリックが圧巻でした。

粗筋

2人の青年の始まりの章

おれと重樹は一心同体だ。

忘れもしない。俺のせいで重樹は一生モノの傷を背負うことになった。
もはや健常者と同じ生活はできない。

おれはその責任を一生かけて償わなくてはならない。

洋館で無慈悲に行われる連続銃殺事件

ロートレック荘にて集った美女とその親たち。
もちろん重樹たちも集まりに参加しました。

集まった目的はある種のお見合い。
娘よりもはりきる親たちが率先して、婚約にこぎつけようとします。

しかし、それを阻むかのように美女が次々と銃殺される事態に。

いったい誰がどうやって何のために。
ロートレックの作品に彩られた洋館が血にまみれた地獄へと変貌したのでした。

事件

作者が隠すメタ・ミステリーを暴け

あからさまな違和感のせいで、読んでいてムズムズとします。

明らかにおかしい。でも、この違和感がどう物語に影響するか分からない。
そんな言いようのない不気味さがありました。

一般的な推理小説とはまるで違う斬新さが本作の売りでしょう。面白い。

証拠や証言、アリバイは意味をなさない

翻せば、王道ミステリーを好む人にはとことん不向きです。
刑事が一生懸命調べる情報は真実を解き明かす材料になりません。

小説に隠された構造だけが真実に至る道。それ以外はオマケ程度なのです。

がっつりとした推理小説をお望みの方はやめておきましょう。

クライマックス

きっつい…。

後味が悪くなることは冒頭から想像していましたが、予想以上でした。
被害者が本当に憐れ。犯人はピエロ。関係者も永遠に呪いとして残り続けるんでしょうな。

落とした後に更に落とす展開が続くので、救いなんて1mmもありません。

果たしてあなた犯人の動機に気づけますか。そして、耐えられますか。

まとめ

最後のネタバレが面白く、読む手が止まりませんでした。
ただし、後味は悪いです。クライマックスで一気に来ました。

誰が悪いのかと考えたら胃が痛くなります。覚悟のうえで読んでください。

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