あまりの面白さに一気読みした名作の未来日記。
強烈な個性を持った由乃、予想不可能の展開の数々。

未来日記の設定も相まって非常に読みごたえがありました。

未来日記を読んだ中で、いくつか気になった点がありました。
今回はその謎についてネタバレ全開で考察をしていきましょう。

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我妻由乃の正体と結末

本作で我妻由乃は3人登場します。

  • 1週目の由乃:サバイバルゲームの優勝者であり、タイムリープを2回行う
  • 2週目の由乃:1週目の由乃に殺害される
  • 3週目の由乃:2週目の天野雪輝に救われ、日常に戻る

3週目の由乃は最終巻の登場ですので、本作では基本的に1週目の由乃が登場することになります。
なので、これ以降の「由乃」は「1週目の由乃」として話します。

由乃の生い立ちとサバイバルゲーム参加までの流れ

由乃は早くに両親を失い、美坂児童養護施設に預けられました。
才色兼備で人懐っこいイメージ通りの少女だったようです。

ところが、我妻夫婦に引き取られたことで状況は一変しました。

我妻夫婦はエリート階級の人間であり、子どもにも相応の期待をしていたのでしょう。
不幸にも子宝に恵まれなかったので、養子の由乃に望みを託します。

しかし、思った通りに育たなかった由乃に義母は苛立ち、鬱状態になります。
由乃への虐待は悪化の一途を辿り、最終的には犬小屋サイズの牢屋に閉じ込めて畳を食べさせるまでになりました。

放任主義の義父は由乃を気にはするものの助けようとしません。
耐えかねた由乃は逆に両親を牢屋に閉じ込め、そのまま衰弱死させました。

その後、ムルムルの手筈で初めてのサバイバルゲームに参加することになるのです。

ちなみにこの段階で由乃は作中のようなヤンデレにはなっていません。

自分に未来の約束をしてくれた雪輝のために戦おう。最後は死んでも構わない。
そのために殺人も厭いませんが、1週目の雪輝は序盤から割と積極的に戦っており、良き相棒として戦っていました。間違っても監禁などはしていません。

タイムリープ。そして、2週目のサバイバルゲームへ

由乃が本格的に壊れた原因。それは2週目のサバイバルゲームで2週目の由乃を殺害したためです。

サバイバルゲームでの勝者は1人ですが、雪輝と由乃はお互いを殺せませんでした。
そのため、雪輝は由乃と一緒に心中を図ろうとします。

もちろん由乃は到底納得できません。なぜなら、雪輝と未来を誓ったから。それが叶わないのは耐えられません。
そこで、自分だけ心中を偽装してサバイバルゲームの勝者となったのです。

さて、本作の地獄はここから始まります。

神となった由乃は雪輝を蘇生させますが、復活したのは肉体のみで魂は宿りません。
このままでは雪輝と話せない。

絶望した由乃はタイムリープを行い、2週目のサバイバルゲームへと進むことになりました。

ただ、タイムリープ先には2週目の由乃が存在しています。サバイバルゲームは12人までであり、今のままでは参加が叶いません。そうなると雪輝と一緒にいられるのは2週目の由乃になってしまいます。

そんなの許さない。 参加権を強奪するために由乃は2週目の由乃を殺害しました。

自分を殺して正気を保てるはずがありません。しかし、由乃はそれでも雪輝に会いたかった。

結果、由乃は記憶を改ざんして歪な正気を保とうとします。ここに狂気のヤンデレが誕生したのです。

もっとも記憶の改ざんは戦場マルコの決闘終了後あたりにやめているようです。(7巻以降)
とはいえ、止まらない狂気は最後まで続きます。

3週目へ。そして、1週目の由乃の結末

2週目のサバイバルゲームも終わりを迎え、やはり雪輝は現実に打ちのめされました。
だったらまた雪輝を殺して、3週目へ飛ぼう。由乃は雪輝に襲い掛かります。

ところが、ここで誤算が生じます。デウスの力を託された雨竜が乱入してきたのです。
雨竜の妨害で由乃は雪輝を始末できず、3人は3週目へ飛ぶことになりました。

3週目でも由乃のやることは変わりません。まずは3週目の由乃の殺害です。
しかし、雪輝にそれを阻まれます。まあ、それだけなら問題はなかったでしょう。

雪輝は救急車を呼んでおり、それによって由乃の義父が自宅に帰ってきたのです。

どんなに虐待をされても血が繋がっていなくても由乃にとっては大事な両親でした。
様々な思い出がフラッシュバックし、狼狽した由乃は勢いで義父にナイフを突き立てます。

その後、今度こそ3週目の由乃を殺そうとしますが、最後の最後に両親が3週目の由乃をかばいます。

トドメとばかりに封印していた雪輝が復活し、由乃を諭しました。
もうこれ以上の我儘は通じない。かといって、雪輝は殺せない。

結果、由乃は自ら命を絶ち、2週目のサバイバルゲーム勝者を雪輝に譲りました。

こうして由乃の暴走は終了したのです。

3週目の由乃に1週目の由乃の記憶を継承

なぜか1週目のムルムルは1週目の由乃の記憶を3週目の由乃に継承しました。
3週目の由乃はしばらく記憶が混濁していましたが、徐々に雪輝に意識が向きます。

結局、今まで通りにストーキングするヤンデレ気質を開花させるのです。こりねえな。

その後なんやかんやあって雪輝との思い出を取り戻しました。

色々とぶっ飛んでますが、2週目の雪輝があまりにも悲惨だったのでハッピーエンド路線に持って行ったのでしょう。
まあ、おかげで後味は悪くなりませんでした。

3週目の由乃と2週目の雪輝はどうなるのか。
2週目の9thが3週目に馴染んでるので、2週目の世界を放棄して3週目で仲良くやってそうですね。

由乃の両親クズ過ぎ問題

作中であまりのヤンデレっぷりに軽い恐怖を覚えましたが、そもそもが両親のせいなんですよね。
3週目の世界ではなぜか幸せ家族になってますが、狂気とも言える虐待が許されるのは納得できない。

いや、由乃は納得してるから良いのか。強いな、この子。

雪輝の両親もそれなりにあんまりなので、この世界はそういうものかもしれません。
とびきり由乃の両親がやばいですけどね。警察いけよ。

サバイバルゲームの開催理由と選定条件

そもそもなぜこんなにもまだるっこしい方法を取ったのか。
12人を選んだ基準は?

という話ですが、僕の見解として「全てが神の戯れであり大した意味はない」と言うのが結論です。

登場人物のモチーフ

ネットで調べましたが、目を引いたのが登場人物の由来です。
どうにもゲーム参加者は神話の神をモチーフとしているようです。

登場人物と神話の関連性
  • 天野雪輝:ユーピテル(ゼウスと同一視される神)
  • 我妻由乃:ユーノー(ユーピテルの妻で、ゼウスの妻と同一視される神)
  • 雨竜みねね:ミネルヴァ(ゼウスの娘で、知恵の神)
  • デウス・エクス・マキナ(演出技法の1つで解決困難の事態に神が現れ、物語を収束させるもの)

彼らは全てゼウス(デウス)にゆかりのある人物であり、それに沿って物語を組んだと推測できます。

天野雪輝=神

ここからは完全に妄想です。

そもそもデウスは天野雪輝の空想世界に存在した神です。
1巻で「神ならば空想に住むことも可能」と言っていますが、それすらも空想だと考えています。

でなければ、デウスが天野雪輝に固執する理由が分かりません。
自分自身、もしくは分身であるならば色々とつじつまが合うのです。

序盤にデッドエンドを回避した理由はサバイバルゲームを熟知している由乃がいたからに過ぎません。
それ以外の場面でも頼りがいがあると言えず、デウスが目をかける理由が分かりません。

また、デウスが用意した観測者の秋瀬或が雪輝に固執する理由も不明です。

ていうか、作中の人物全員が雪輝を中心に動いています。神の戯れにしか思えないのです。

以上のように神は自分を弱い存在(雪輝)として人間社会に溶け込ませ、満を持して今回のゲームを開始したと考えられます。

全ては雪輝の想定する世界

一見すると誰もが神を狙えるフェアなバトルに見えます。

しかし、6巻冒頭でデウスが「本来なら4thは本命候補」と言っており、ムームーも「4thは調整役」と言っています。
また、目的として「ゲームを面白く早く」とも言っています。

となれば、全ての人物が事前に役割与えられており、皆がそれに沿って動いていると考えるのが自然です。

メタ的に言えば、デウス・エクス・マキナは演出技法に過ぎず、神でもなんでもありません。
あくまで雪輝が用意した「分かりやすい神」でしかないのです。デウスすらも雪輝の思惑に沿って動いています。

父や母の死なども物語を盛り上げる要素でしかなく、全ては雪輝の空想で動いています。

空想特有のぶっ飛んだ倫理観

男の子なら誰もが妄想する「教室にテロリストが襲ってくる」というものがあります。
で、実際、雨竜がテロリストとして襲ってきました。

また、8巻でムルムルが雪輝に「全てを殺し、神となれ」と言ったあたりから雪輝は殺人を躊躇していません。
どうせ神になれば元に戻るという空想の中、ありえない倫理観で動いているのです。

いわゆる中二病を現実とさせる神の悪戯。そう考えるのはどうでしょうか。

そもそも本当に世界が滅ぶのか

さも当然のように世界が滅ぶ前提で進んでいますが、果たしてそれは本当なのでしょうか。

第1回目の因果律大聖堂ミーティング(1巻)では、そのことは一切話していません。
6巻でやっとデウスの寿命の話になりますが、そこでも参加者に周知されていないのです。

2週目で世界が虚空になったので、滅んだと言って良いのかもしれません。
が、ムルムルが「神の力で作り始めろ」と言っているあたり、滅んだというより生まれ変わりと言った方が正しい気がします。

女神転生Ⅲの創生に近い。まあ、生物的には滅んだと言って間違いないのでしょうが。

もっとも物語の終わりに2週目の雪輝は3週目の由乃の手を取りました。
これによって2週目は完全に崩壊したとは思います。

余談の妄想ですが、2週目が崩壊することで、2週目の雪輝は神としての能力を失ったと思います。
ほぼ一般人として過ごすことになるのかもしれません。

神としてはどう転んでも良いのでしょう。ただの悪ふざけにすぎません。

まとめ

以上が僕なりの未来日記の考察です。
こういった終わりが曖昧の作品は考察のしがいがあって良いですね。

物語として本当に楽しかったです。

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