魔法少女ノ魔女裁判【レビュー・ネタバレ考察】

作品情報
メーカー:Acacia, Re,AER
価格:3,500円
クリア時間:27時間
販売サイト:
シナリオ
とにかくキャラを愛でる作品。クライマックスも熱い。
ただ、事件数が多い上にやることも変わりません。そのため、若干のマンネリは感じました。
ゴスロリ服で着飾った少女たちの殺し合い

監獄「牢屋敷」に収監された13人の少女たち。
彼女たちは強制的に自由をはく奪され、共同生活を強いられます。
理由は魔女因子を持っているから。危険分子と判断されたため隔離されたのです。
現代の魔女狩りと言うのでしょうか。しかも悲劇はそこで終わりません。
強いストレスを受けると魔女因子が高まり、魔女化が進む
魔女化が進むと「殺人衝動」に苛まれるようになり、行く行くは殺人事件が確定的に発生します。
それを助長するかのように牢屋敷の環境は劣悪。全員が魔女化するのは時間の問題と言えるでしょう。
登場人物は可愛いながらも殺伐とした世界観はローゼンメイデンを彷彿とさせます。

至高の百合ゲーであり、少女たちの生活に癒される

最高の百合ゲー。
好きの反対は無関心とはよく言ったもの。少女たちはいがみ合いながらも強烈に意識し合っています。
エマ&ヒロが代表例でしょう。ここまでの憎悪はもはや愛だよ、愛。
- シェリーとハンナの漫才コンビは見ていて楽しい
- アンアンとノアの低学年コンビも捨てがたい
それだけに確実に死んでしまうことが残念でならない。それ含めて作品の良さではありますが。
頼む!この娘だけは最後まで生きていてくれ!そう何度願ったことか。
本質部分はキャラゲーですので、ぜひとも少女たちを愛でてあげてください。
魔法に狂わされた少女の禁忌を抉る

治癒、怪力、浮遊…。
魔女因子を持つ少女たちは固有の魔法を持っており、それが原因で苦しめられてきました。
- 魔法の暴走で誰かを壊した
- 過去のトラウマに起因する魔法の取得
魔法は呪いとなり人生を破壊し、甚大なトラウマを植え付けました。
トラウマがあるから魔女になるのか。魔女だからトラウマを持つのか。
自分を保つため封印したトラウマ。それが暴かれれば即座に魔女化する危険を持っているのです。
じっと耐えてもダメ。下手に刺激してもダメ。解除不可能な時限爆弾。そんな救いのない物語を堪能できました。
そんな地獄の結末は如何に。
中世を思わせる舞台。不幸の連鎖が続く地獄の日々。
ダークな魔法ファンタジーとして申し分のない完成度です。
ゲームシステム
特異な能力、主人公だけが能力を把握していない。裁判システム。
ダンガンロンパをリスペクトした作品ということでしょう。随所にオマージュ要素が見受けられます。
ただ、ゲーム要素はそこまでありません。シナリオを盛り上げるオマケ程度に思っておきましょう。
審問の疑問点や矛盾を指摘し、真実を暴け

殺人事件が発生したら1時間程度の調査を経て、裁判に移ります。
その調査はあってないようなものです。現場に行くだけなので。
裁判では思い思いに事件を語り、矛盾点や疑問をぶつけていきます。
間違いのペナルティはなし。タイムリミットのみがゲームオーバー条件と。
裁判ゲームとしては簡単な部類に入ります。
指摘内容が難しく、意外と高難易度?

と思っていましたが、やってみると思いのほか難しい。
少なくとも一発で指摘事項を言い当てられることは稀です。
その理由は指摘の内容にあります。逆転裁判のような明確な答えはありません。
- 敢えて偽証し、場を混乱させる
- 細かいことにツッコミ、議論を混乱させる
捜査の素人だからこそ各々の感情を利用する選択肢が正解となり、よほど感情移入しないと分かりません。
本当に難しいんですよね。理由を聞けば分からないこともありませんが…。
更に犯行の決め手となる「魔法」には確定情報がありません。
本人から聞くのが1つですが、初対面ですので正直に言う保証はなく。
もちろんまるっきり嘘ではボロが出て吊られる可能性はあります。ある程度は真実を混ぜているはず。
現場の状況を鑑みて、少女たちが隠している魔法の本当の効果を類推する。これが中々に難しく面白い。
まあ、間違えた際のメッセージが違うので、選択肢の総当たりもアリでしょう。
処刑は少女たち自身で

投票はスマホの処刑ボタンをグーっと押すことで可能。これはプレイヤー自信で行います。
殺したのはお前たちだぞ。ストレスを可能な限り与えるゴクチョーの鬼畜さが表れています。
表面上は仲の良かったのに。殺してしまうほどの憎しみとはいったい。
動機はしっかりと明かされるので、ぜひ楽しみにしてください。
考察

ネタバレにつき閲覧注意。
魔女裁判の目的
わざわざ少女たちに議論させる。しかもゴクチョーのセリフを見るに犯人は特定関係なしに処刑されるように思えます。であれば、何のために裁判をするのでしょうか。
恐らくはストレスを増大させるショーの一環なのでしょう。
処刑を見せつける。そうすれば、どんどん魔女化が進行するはず。そんなところ。
しかし、それにしてはまどろっこしい気もします。
裁判所の様子は国に監視されている(ユキのセリフより)ので、見世物としての役割もあったのかもしれません。
なんやかんやでハッピーエンドですが、人間が魔女を虐殺したことは事実。
少女たちの過去も人間の悪意に繋がっているので、えぐい裏設定があっても驚きません。
ゴクチョーについて
エピローグのゴクチョーの通話にて、恐ろしい事実が判明します。
なんと魔女因子は広がり続けており、ゴクチョーは魔女駆逐のために動いていると言うのです。
これについて2つの疑問があります。
まず、大魔女「月代ユキ」が魔女因子を消滅させたはずではないかという疑問。
ただ、これは自分の中で確かな回答があります。
根拠はラストの背景。ゴクチョーはココと同じ千里眼で会話をしています。
つまり別の世界線のゴクチョーと通話しているわけです。
他の世界線では魔女因子が生きているという話なのでしょう。
次に「魔女駆逐」の真意。通話の内容を聞くに全ての世界線で魔女を滅ぼそうとしているように思えます。
なぜそこまでするのでしょうか。
憶測にはなりますが、魔女因子は世界線をまたいで拡散するのかもしれません。
実際、ココの千里眼やナノカの幻視、ヒロの死に戻りは時間や世界線を無視しています。
魔女因子が同様でも不思議はありません。
ユキが消せるのは自分自身の魔女因子のみ。他の世界線のユキが残した魔女因子には作用しないのでしょう。
また、ゴクチョーはラストでエマ達の帰還の手はずを進めています。
更に「駆逐」という魔女への敵対発言をしていることから、どうにも人間側に肩入れしているようにも見えます。少なくとも折衝役はしています。
もっともユキの真意は人間を滅ぼしたくないというものでした。牢屋敷への幽閉も実際は延命措置です。
メルルの指示で魔女裁判をしてはいますが、凍結することで生き長らえさせています。
結果だけ見れば、ゴクチョーは少女たちの命を救っているのです。
であれば、ゴクチョーはユキを後悔させないために動き続けていたのでしょう。
魔女因子撲滅のため人間と対話を続け、幽閉した少女たちの罵詈雑言に耐え、役に立たないメルルの代わりに屋敷牢を管理する。
ブラック勤務だと愚痴を言いたくなる気持ちも分かります。