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作品情報

作者:井龍一(作)伊藤翔太
出版:講談社
巻数:全13巻

雑感

不幸な生い立ちを持つ子供たちのその後を描いた漫画。
主人公の冴木はもちろん、逮捕された灰川も少年時代を歪な家庭環境で過ごしています。

と言っても暗い描写は多くありません。全ては過去の話であり、心に傷を負っているものの懸命に今を生きているのです。

読めば読むほど勇気づけられる。重いテーマでありながら不思議な温かさに満ちていました。

なお、本書は二部構成になっており、サスペンス重視の第1部と打って変わって第2部はヒューマンドラマメインになっています。

本書の本領は第2部から。第1部の事件はそこまで重視されていない点には注意してください。

粗筋

虐待を受けていた子ども達を引き取り、父親と慕われていた灰川十三。

しかし、彼の自宅から大量の遺体が見つかったことで、警察は彼を指名手配。
程なくして十三は逮捕され、取り調べにて自らの犯行を認める供述を始めた。

ところが、彼に助けられた子ども達は一様に彼の犯行を否定。その内の1人、蓮見花音は真犯人を見つけるべく、独自に動き始めていた。

同じく虐待された過去を持つ刑事の冴木仁は彼女から協力を依頼され、事件の真相を探ることになるのだった。

登場人物

内容の割に善人ばかりでびっくりした。

ゼロではないですが、脇役なので早い段階で消えます。人間の悪意が苦手な人も気兼ねなく読めるでしょう。

冴木仁

可哀想になるぐらいに影が薄い。彼の物語は5巻で終わっており、深堀する要素は残っていません。

まあ、1巻の表紙を飾っていないことからも彼は主人公では無かったのでしょう。にしたって扱いが悪すぎますが。

とはいえ、キャラクターは素晴らしい。明るく真っ直ぐな刑事で、人の頼みを無下に断らない度量もあります。
人望もあり、彼を嫌悪する人間はほとんどいません。だからこそ花音も彼を頼ったのでしょう。

虐待のせいで歪な感情を持つものの周囲の助けにより無事に改善しますし、見ていて気持ちの良い男なのは間違いありません。

殺伐とした本作の中の清涼剤的存在。彼がいるから肩ひじ張ることなく物語を楽しめました。

灰川十三

実質主人公。6巻から11巻に渡って彼の過去回想が描かれており、あまりにも壮大な物語に度肝を抜かされます。

因習、戦争、虐待、非人道的実験などリアルとオカルトが混在した彼の過去はもはやエンタメ。
ほとんどファンタジーなんですが、もしかしたらどこかで本当に起きていることかもしれない。そんな絶妙な生々しさもありました。

存在そのものがネタバレなので、本記事ではこれ以上語ることはしません。

物語

二転三転する事件の様相を楽しめる第1部

灰川邸監禁死体遺棄事件の犯人を捜すことが第1部の目的ですが、衝撃の展開の連続で先が全く読めません。

何しろ指名手配された十三が1巻で逮捕され、しかも自白までしますからね。あまりにもスピーディー過ぎる。

いくらなんでも早いので、狂言と思うところですが、実際に彼の生き方は謎に満ちています。

虐待された子どもを古びた洋館に集める中年男性。この字面だけで怪しさ満載。
しかも引き取った子供達からは父親と呼ばれていますからね。洗脳されたと考えても不思議ではありません。

しかし、子ども達も子ども達で不穏な行動をしており、彼らが十三に罪を着せたとも見えます。

そんなこんなで第1部はミステリーとして申し分なく面白い。5巻で犯人まで見つかるのも評価ポイント。最終巻まで真相はお預けなんて殺生な真似はしません。

第2部は日本の悪しき因習から始まるヒューマンドラマ

事件は第一部であらかた解決しており、第二部からは十三の生い立ちにスポットがあてられます。

蔵土事件(おそらく元ネタは津山三十人殺し)で滅んだ村の出身者である十三の半生が語られる第2部。
彼は何者なのか。なぜ虐待された子どもを引き取り、死体遺棄事件の犯行を自供したのか。全ての答えが書かれていました。

尋常じゃない格闘能力を持っている彼の過去は暴力に満ち溢れており、第1部と打って変わって何もかもが派手に進行していきます。

実に映画映えする内容で、ドラマ化も納得でした。見てる分には楽しいんだよな。本人はたまったもんじゃないだろうけど。

貧しい国を生きる子供達にも焦点を当てており、それこそが彼の後の人生に影響を与えたのでしょう。

まるで一本の映画を読んだような読後感で、確かな満足感がありました。

ただし、いくらなんでもファンタジー過ぎるので、1部のようなリアルで恐ろしいサスペンスを求める人には合いません。もはや別作品と思った方が良いレベル。

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